AERA with Kids+ Woman MONEY aerauniversity NyAERA Books TRAVEL

「中国」に関する記事一覧

上海、かたつむりの家
上海、かたつむりの家 上海市は、中国の総面積の1%にも満たない小さな行政区だが、この街にうごめく約2500万人が、国の経済発展を強力に牽引している。  本書の登場人物たちもまた、上海の経済発展、経済格差と無縁ではいられない。10平米の超狭小アパートに夫と暮らす海萍(ハイピン)は、田舎の母に預けている我が子に他人と認識される一歩手前のところまで来て、慌てて不動産購入を決意する。親子愛を取り戻すためには「かたつむりの家」を出なくてはならないが、上昇し続ける不動産価格のせいで、頭金を貯めることさえ出来そうにない……。  妹への借金申し込みをきっかけに動き始めた物語が、国家レベルの汚職にまで繋がってゆく構成は、見事と言うほかなく、息もつかせぬクライマックスは、上質のエンターテインメント。金に殺される者と生かされる者、両者の分かれ目は、まさに紙一重だ。庶民だろうと官僚だろうと、堕ちる時は堕ちるという真理の中に、リアルな中国の「今」が匂い立ち、背筋に冷たいものが走る。
サイバー・テロ 日米vs.中国
サイバー・テロ 日米vs.中国 タイトルを見て、ネットワークのサイバー攻撃をエゲツなくやってくる中国に対して、日米が手を携えて対抗している、というような内容かと思ったら、中国もロも米もそれぞれやってるから日本も気をつけろ、という話だ。別に中国だけの話じゃない。太平洋戦争の頃は、ABCD包囲網なんていって補給路を断って日本を追い詰めたりした。そんなことは国家間の争いで相手をイヤな目に遭わせたいとなれば当然考えることで、現在は「ネットワークがいろんなものの生命線になってる」から、そこを狙うというのである。  「これが国家によるサイバー攻撃であろう」と思われるもの(国家はサイバー攻撃をやったと公式に言わないので、状況証拠だけで「たぶんやってる」と想像される事例)も紹介されていて、「ネットが切断されて全機能マヒ!」させられたらどれだけ困るかが縷々説明される。で、そのサイバー攻撃は、プログラムをうまいこと外部から操作して、ふつうの人がふつうの操作をしていると、知らないうちにアクセスが集中してシステムをダウンさせる、というような方法の攻撃らしい。  かみくだいて言えば「何万人という人の家の電話に、勝手に政府への問い合わせFAXを発信するプログラムを仕込み、そのために電話がパンク……」というような攻撃、というかイヤガラセというか。以前、宅八郎は一人でこれをやってたが、サイバーテロはこれをプログラムにより大量のマシンでやる。科学は進歩するなあ。  ネットがつながらないと確かに困る。私のようにレンコンのゆで時間を調べたり……というような下世話な話ではなく、もっと大金が動く銀行のオンラインとか重要情報がやりとりされる政府のオンラインとかが切断されて国家規模でたいへんなことになるのだ!と著者は警鐘を乱打している。中国に限らず、アメリカでもロシアでも韓国でもそのへんの個人でも、いつでも警戒しとけよ、ということだ。まずは自分のパソコンの管理をしっかりしとけと。
中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史
中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史 日本が中国化している。経済は中国依存だし(中国がくしゃみをすると、日本が風邪をひく)、尖閣問題をきっかけに中国が日本の領土を奪っていく……なーんて早合点してはいけない。若手歴史学者、與那覇潤が『中国化する日本』で述べているのは、日本社会の中国化である。中国政府とも中国共産党とも人民解放軍とも、まったく関係ない。  中国は世界でいちばん進んだ国だ、というのが著者の前提だ。宋の時代(960~1279)に貴族制を廃止し皇帝に権力を集中させた。官僚は科挙によって広く集める。経済は自由。  著者はあまり強調していないけど、科挙というものが鍵だったとぼくは思う。前科者など一部の例外を除いて誰でも受けられた、つまり人間の能力は平等で、努力の差が結果の差になる。難問奇問愚問のイメージもあるが、実際には考え方を問うものだったらしい。そこから科挙の合格者は頭がいいだけじゃなくて徳もある、となる。トップの皇帝は徳の体現者だ。  新自由主義経済の社会に似ている。勝ち組は努力したいい人で、負け組は怠け者のだめな人、と。  「中国」と正反対なのが「江戸」だ。江戸時代は身分制で階級移動をできなくし、ムラとイエで個人を縛った。不自由だけど、保護もされているので、現状維持で満足という人にはハッピーだった。  中世から現代まで、日本の歴史は中国化と再江戸時代化の両極のあいだを揺れ動いてきたと著者はいう。なるほど、こういう見方もあるのか、とエンタメ的におもしろい。異論反論もいろいろあるだろうが。  現代の日本社会が中国化しているというのはその通りだと思う。もうムラもイエもない。正規雇用労働者はどんどん減り、みんな流民のようになっていく。いくら「絆」だなんだと言っても、崩壊してしまったものの再現は難しい。  中国化は歴史の必然なのだろうか。中国でもなく江戸時代でもなく、という第三の道はないのか。

この人と一緒に考える

黄金の少年、エメラルドの少女
黄金の少年、エメラルドの少女 北京出身で、今やアメリカでもっとも優れた新鋭のひとりとして知られる女性作家の小説集。九つの短篇の大半は現代中国が舞台だ。  表題作では、母親の手で育てられた40代の男性と、父親しか知らない38歳の女性が気のりのしない見合い話に付き合う。中国では理想的な男女のことを「金童(ゴールド・ボーイ)」と「玉女(エメラルド・ガール)」と呼ぶが、適齢期を過ぎて独身の二人は、世間から見れば変人だ。だが、二人は独りきりの未来を受け入れ、人生に期待しなければ失望しないことを知ってしまっている。心を閉ざす者同士の哀しみはすぐに癒やされるものではないが、物語は、時の流れと他人の優しさが心の傷を癒やすことを暗示させる。  移住先のアメリカで一人娘を失った壮年の夫婦が、中国の辺鄙な山岳地帯で代理母を探す「獄」。適齢期になっても結婚しない子を持つ母親たちが不倫の探偵業に生きがいを見いだす「火宅」。愛の求め方と諦め方は独特だが、頑なに孤独を選んでいるようにも見える人々が社会の片隅に安らぎを得る姿がやさしい。
村上春樹の文章で涙する中国人 「国内のバカ野郎はクズ」
村上春樹の文章で涙する中国人 「国内のバカ野郎はクズ」 作家の村上春樹さんが朝日新聞に寄稿したエッセーが中国で話題になっている。東アジアの領土をめぐる問題について、文化交流に影響を及ぼすことを憂慮してた内容で、日本関係の書籍が中国の多くの書店の売り場から姿を消す事態になったとの報道に触れ、ショックを受けたことなどを明かした。

特集special feature

    反日から反政府へ? 巨大化する中国SNSとデモ
    反日から反政府へ? 巨大化する中国SNSとデモ 中国全土で先月18日に起こった反日デモと、2005年に起きた反日デモの違いを豪の東アジア研究者、リンダ・ヤコブソン女史がウォールストリート・ジャーナルで発表した。それを読んだニュースキャスターの辛坊治郎氏は、この見解が「最も欧米識者の平均値に近い」といい、世界がこの一連の騒動をどう見ているかを知ることで、日本は解決への活路が見いだせると結論づける。

    カテゴリから探す