
「中国」に関する記事一覧




中国人民解放軍の内幕
中国問題のジャーナリストによる中国人民解放軍(解放軍)の解説書である。尖閣諸島領有をめぐる日中の緊張関係は、戦争への懸念をもたらしている。なれば関心が向かうのは解放軍だが、実態がわからず単純な見方で捉えられがちだ。 本書は解放軍への複眼的視角を培うことを狙いとし、解放軍の意思決定メカニズム、個別部隊の役割など具体的なシステムを子細に解説してゆく。たとえば組織内の実質的権限を握るのは陸軍・総参謀部である。心臓部の総参一部は有事の際には各司令部へ命令を下す。単なる上意下達式のようだが、組織内に「絶密」級とされる独自の研究機関が存在し、総参謀部を情報分析面で援助しているのだ。 解放軍はその秘密主義ゆえに不安を煽りやすい。しかしマスコミには接触を拒んでも、ビジネスマンには懐が緩み、特別待遇を施すこともある。著者が述べるように「真に警戒が必要な中国もあれば、そうでない中国もある」側面を知ることで不安は和らぎ、隣国への冷静な見方が養われるだろう。


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中国人エリートは日本人をこう見る
中国で日本車が売れなくなっている。影響は部品メーカーにまで及ぶ。「尖閣ショック」と呼ぶメディアもあるようだが、ぼくは「石原不況」と呼ぶべきだと思う。この際、責任の所在をはっきりさせよう。 もっとも、すべての中国人が反日感情を抱いているかというと、そうでもない。すべての日本人が中国嫌いではないように。 中島恵の『中国人エリートは日本人をこう見る』は、中国人若手エリート約百人に聞いた、日本観・日本人観である。 びっくりしたのは、小泉元首相の人気がけっこう高いという話。靖国神社参拝で対立の種を蒔いた張本人ではないか、と思ったが、小泉のように白黒はっきりするほうがわかりやすいということらしい。人気があるからといって、靖国神社参拝に賛成している中国人が多いということではない。 登場するのは日本への留学生をはじめエリートたちだ。高い教育を受け、経済的にも恵まれている。都会育ちで、家庭環境もいい。 彼らは冷静に日本と日本人、中国と中国人、そして世界を見ている。日本はいい国だといい、日本人に対してもよい感情を持っている。中国のGDPが日本を追い抜いたことについても浮かれてはいない。国民一人当たりではまだ大差があるからだ。「中国に負けた」「日本はもうダメだ」と悲愴感ばかりの日本人よりもずっとクールである(と、つい自虐的に悲愴感にひたってしまう)。 しかし、親日的なのがエリート層だということに注意を払わなければならない。貧しい、地方の、高い教育を受けられない人びとは、反日的な感情を抱いているだろう。それは中国社会の矛盾かもしれないし、もしかするとその矛盾を政治が利用しているのかもしれない。 国家間の対立を煽って状況がよくなることなどあり得ない。歴史を振り返ればそれは明らかだ。暴走老人よりも中国人エリートと手を結び、新しい日中関係を築いていくべきだ。

中国外交 苦難と超克の100年
現代中国の外交戦略は「保守派と改革派の対立」といった図式ではとらえられない。著者によれば、理解のカギは近代史にある。 中国人自身も囚われてきたアヘン戦争に始まる「屈辱の近代史」というイメージは、中国の外交戦略の連続性を覆い隠してきた。本書は、「イデオロギーにもとづく歴史観」の乗り越えを目指す近年の中国史研究の成果を参照しつつ、その連続性をたどり直す試みだ。 見いだされた連続性。それは、時に過激なスローガンを掲げつつも、その実一貫して「現行の国際秩序」を黙認し「国内安保」「国力増強」を最重要視し続ける外交姿勢である。だが、その姿勢も1997年のアジア金融危機以降、大きな転換点を迎えたと著者はいう。中国は「責任ある大国」として国際社会に積極的な参入を始める。 GDPは世界第二位になったが、国民一人当たりの所得は日本の9分の1。「経済発展」路線と「大国」の責任のはざまで外交姿勢を模索する中国。本書はその行く末を見定める材料を提供する。

中国人との「関係」のつくりかた
国内のビジネスマンを主対象に、中国人の関係の結び方を「グワンシ」というキーワードを用いて解説したもの。聞き慣れない概念だが、香港大学で教鞭を執るツェは、日本企業が中国進出に失敗する背景に、日本人のグワンシへの理解不足を指摘する。 グワンシとは、自分を中心とした同心円にもとづく人間関係を指す。部外者と身内を区別し後者を重んじる行動原理でもあり、人口の多い中国において特に経済的混乱が見られる際、資源の再配分に関わる機能を担う。このことは日本が集団(会社や社会)のルールを優先して個人的な人間関係を後回しにするのに対し、中国では後者を優先させ前者を後回しにするという相違点にも結び付く。以上の点を理解した上で日本企業が行うべきは中国人従業員との“対話”だという。従業員に中国企業との違いを根底の文化差から伝え、納得してもらうことが中国進出成功の鍵となるのだ。 グワンシについて学術研究を基盤としつつ、現状に即したアドバイスも交えたバランスの良い実践書である。

日本、買います 消えていく日本の国土
土地を獲得してはチャラになるということを四千年も繰り返してきた中国人は「土地と水に恋して」きた。それに応えた我が国の売国ビジネスマンが、中国人や韓国人に日本の国土を切り売りしている。全国の山林は国が把握している分だけでも、山手線内の半分強の面積が今や中国人などのものだし、農地、国境離島、軍用地までもが「幽霊地主」化され、中国・韓国人の土地となっている。日本人は済州島を買えないが、韓国人は対馬を買えるし、すでに買っている。それどころか彼ら外国人は、日本全土を無制限に買えるのだ。なぜなら「外資規制が皆無」だから。 こんな国は世界でも日本だけで、開かれた日本はこの先、中国人や韓国人に国土を虫食いにされ、やがて尖閣諸島や竹島の領土問題は、北海道や沖縄にまで踏み込まれるだろう。「投資目的は、ビンテージ・ウイスキーと一緒で、貯蓄の一種です」なんぞと、せこいレトリックで国土を飲み干されるその前に、土地の外資規制法規を制定しろ――と、著者は新たな国土防衛を訴える。

中国と茶碗と日本と
四川大学で日本文学を学び、さらなる日本文化研究のため来日した著者は、日本の日常に、古代中国に由来する慣習が息づいていることに驚く。 例えば正月に飲む「お屠蘇」。実は、中国ではそんな慣習は既に廃れ、屠蘇酒の名は、古代の漢詩のなかでしか見ることができないのだ。 著者は、まるで古代中国の夢に入り込んだような感覚を覚え、「日本のなかの古代中国」を探し求める。 しかし、同じ「昔の中国のもの」でも、茶の湯で使われる中国製陶磁器の良さが、著者にはわからない。派手さはなく、むしろ粗末に見える。中国の美意識では評価されないであろうそれらがなぜ日本でもてはやされ、一部のものは国宝にまでなったのか。 著者は日本と中国のさまざまな文献を調べつつ、その謎を解いてゆくのだが、その過程が実にエキサイティングである。 隣国の女性研究者の新鮮な目によって、改めて日本文化とは何かを突きつけられる作品である。
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教育・ライフ

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