AERA with Kids+ Woman MONEY aerauniversity NyAERA Books TRAVEL

BOOKSTAND

善意にイライラ、人工肛門で医師にモノ申した日も...がん患者になった政治部記者が闘った日々
善意にイライラ、人工肛門で医師にモノ申した日も...がん患者になった政治部記者が闘った日々 がんのなかでも生存率が低いとされる難治性の膵臓(すいぞう)がん。本書『書かずに死ねるか』は、43歳で膵臓がんを告知された朝日新聞政治部記者・野上祐さんが連載していたコラムを書籍化したもの。  本書の中では、新聞記者ががん患者になって初めて感じた葛藤や、また医師や看護師の言葉に傷ついた事も多々あったと明かしています。  たとえば、人工肛門をめぐる問題。人工肛門の場合、腹部に便を溜める袋を貼り付けるのですが、 病院では"早く慣れてください"と言われるだけで、どんなに気を付けても便が漏れてしまったと言います。  あるときは、扱いに精通したベテラン看護師が装着してくれたにも関わらず、あっけなく漏れてしまったのだとか。 「『やっぱりできないんじゃないか』。けっきょく正解は見つからなかったのに、気分がすっきりした」(本書より)  プロの看護師が着けてすら漏れるのだから、ましてや医療に関しては素人の患者側がいくら頑張っても漏れるのは当たり前。それでも患者側の苦労を想像できない医師や看護師からは相変わらず、まるで患者側の努力が足りないような言葉を繰り返し言われたことに憤慨。たまらずに、以下のように言い返したと言います。 「すかさず専門家の名前を挙げて、『あの人にやってもらったんですけど、漏れました』。黙り込んだ相手にだめ押しした。『専門家がやっても漏れるんですから、慣れは関係ないですよね』」(本書より)  野上さんはやがて、がんの症状そのものよりも、がん治療に伴う他の要素にストレスを感じていたことに気づきます。たとえば、周囲からの善意のアドバイス―――もう十分に頑張っているのに「頑張ってください」と言われることなど―――にも複雑な思いを抱えたこともあったと言います。 「自分が闘っている相手は病気ではない」 「治療や仕事で関わる、決して悪意のない人たち。具体的には、その間でパターン化されてきた考え方や習慣こそ、自分を苦労させる敵ではないか」(本書より)  2018年12月末に亡くなるまで、自身を"取材"するかのように病床で書き続けられた本書は、最期まで冷徹な目線を失わずにがんと対峙した記者が心血を注いだ1冊と言えるでしょう。
甘味中華? 洋食中華!? 町中華探検隊が名店50軒を徹底取材!
甘味中華? 洋食中華!? 町中華探検隊が名店50軒を徹底取材! 今回ご紹介するのは『町中華探検隊がゆく!』なる一冊。「町中華」とは、主に昭和のころに創業し、高度経済成長期~バブル期にかけて続々と増えた町の大衆的な中華食堂のことを指すのだそうです。そう聞くと「ああいうタイプのお店か!」とパッと脳裏に思い浮かぶ人も多いのでは?  本書はこれまで数多くの町中華を訪ねてきた、北尾トロさんを隊長とする「町中華探検隊」の隊員5名が東京の名店50軒を徹底取材し、知られざる「町中華」の物語に迫った内容になっています。  町中華というと、本場の中国料理店とは異なり、中華以外のメニューが並ぶこともしばしば。むしろそれこそが魅力のひとつといえましょう。本書にはそうしたユニークな店が次々に出てきます。  たとえば1章の「町中華の面白さを知る」には「甘味中華・洋食中華」なんていうカテゴリが。新御徒町の「今むら」にはラーメンやチャーハン以外にカツ丼や海老フライなどのメニューもあり、しかもお店の看板には「とんかつ」と銘打ってあるのだそう! 春日にある「ゑちごや」はタンメンや中華丼のほか、カレーライスやカツ丼、目玉焼き定食、そしてあんみつやしることいった甘味メニューもあるというから驚きです。  2章の「町中華密集地帯を歩く」では荻窪、浅草橋、堀切菖蒲園という3か所を特集。お店の紹介とともに、なぜその土地が町中華のメッカとなったのかやエリアごとの町中華の特徴などにもふれており、ぶらぶら街歩きをしながらお店をはしごしたい気持ちにさせられます。  続く3章「町中華のメニューを研究する」では、中華丼に冷やし中華、餃子、タンメン、チャーハンなどが実においしそうな写真とともに登場。「中華丼は町中華の実力のバロメーター」や「素材そのものが何よりの調味料」など、各店の定番メニューの魅力がとことん語られています。本書にはお店のご主人への取材が数多く収められていますが、店主の人柄やこだわりなどを垣間見ることができるのも大きな魅力です。  最後の4章は「町中華をディープに楽しむ」として、立地や建築、店主の趣味など独特のディープな視点から選んだ町中華が紹介されています。たとえば三河島にある「すずき」は、店内に4つあるテーブル席はどれも1人席という非常にユニークなレイアウト。これはどの位置からもちゃんとテレビが見えるという計算され尽くした角度になっている、おひとりさま優先のお店なのだとか。ほかにも手書きメニューがお店をさらに味わい深いものにしている椎名町の「十八番」や豊洲の大型団地の一階にある「中華いちむら」など、ベテランの町中華好きにも納得のお店が並んでいます。 こうして見てみると、いちおう定義らしきものはあるものの、その中身はとても自由で奥が深い「町中華」。探検隊のメンバー自体も、店の歴史にこだわる人やコスパ追及派、店主の人柄重視など、探索ポイントはさまざまだといいます。  であれば、私たちも肩ひじ張らずに、自分の好きなスタイルで町中華を楽しむのがいちばん。チェーン店とは異なる独自の進化を遂げてきた「町中華」の魅力に、もっともっと気軽に皆さんも親しんでみてはいかがでしょうか。読んだ後は近所の町中華にふらりと訪れたくなる、そんな食の楽しさを刺激してくれる一冊になっています。
ツイッターフォロワー数9万人! 上馬キリスト協会が出したゆるーい本って?
ツイッターフォロワー数9万人! 上馬キリスト協会が出したゆるーい本って? 皆さんは「上馬キリスト教会」のツイッターのアカウントをご存じでしょうか? 東京都世田谷区駒沢に実在するメソジスト系単立教会でもありますが、2015年2月にスタートしたツイッターアカウントが話題となり、フォロワー数9万人(2019年5月段階)を超えるほどの大人気アカウントとしてその存在を知られています。  このアカウントを運営しているのが上馬キリスト教会の信徒である「マジメ担当」と「おふざけ担当」のふたり。彼らがふだんのツイートでおこなっているのと同様に、聖書とキリスト教の世界を本当にゆる~く、ざっくりと紹介したのが本書『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』です。  神道系と仏教系が大半を占める国・日本。そのため、キリスト教や聖書についてよく知らない人が多いのは自然なことであり、そもそもそこまで興味を抱いていないという人がほとんどかと思います。  けれどもし、たとえばキリストの弟子である使徒について「ペテロはドジでおっちょこちょいな使徒のリーダー」「癒し系使徒のピリポは『ドラゴンクエスト』の初代勇者?」なんて言葉を目にしたら、思わず興味をそそられてしまいませんか? このゆるさ、真面目でとっつきにくい聖書のイメージが一転しちゃう......!  ほかにもキリスト教や聖書にまつわる豆知識が満載の本書。たとえば「キリスト」という名前ですが、これは名字ではなくて「油注がれた者=救世主」のこと。つまり、「イエス=キリスト」は「イエス・ザ・救世主」という意味なのだとか。「ええそうです、なんとなくちょっとプロレスっぽい呼び方で、この2000年以上、呼ばれ続けていらっしゃるのです、この方」なんてふうに、楽しくざっくりと教えてくれます。  こうして見てみるとわかるとおり、本書のコンセプトは「信じなさい」でも「聖書に従いなさい」でもなく、「まずは聖書を楽しんでみて!」ということ。本書「はじめに」では、「この本を読んで「キリスト教って素晴らしいな!信じよう!」とか思う方がいらっしゃったら、私たち、全力で止めます」とまで言っちゃってます。  信徒ではないノンクリスチャンにとっては、キリスト教や聖書は人生において必要ないものかもしれません。けれど、宗教に寛容と言われる日本に生まれた私たちだからこそ、こうして違う宗教についてもゆる~く笑いながら触れることができるとも言えます。せっかくならその恩恵を受けてみるのもよいのでは?  というわけで、自分の知識や世界を広めるうえでもタメになりそうな本書。キリスト教の超・超・超・超入門書として、気負わず構えず開いてみてはいかがでしょうか。
誤嚥性肺炎の予防にも!? 知られざる「音読」の健康効果に迫る
誤嚥性肺炎の予防にも!? 知られざる「音読」の健康効果に迫る 2017年刊行の前著『心とカラダを整える おとなのための1分音読』が大ヒットした、大東文化大学文学部准教授・山口謠司さん。続編となる『もっと心とカラダを整えるおとなのための1分音読』では、夏目漱石の『こころ』や、中島敦の『山月記』など教科書でおなじみの名作を、"1分を目安に読める"ボリュームで55篇紹介しています。  「音読」には、黙読にはない利点が盛りだくさんとする本書ですが、その意外な効用が、「誤嚥(ごえん)性肺炎」の予防。高齢者に多く、今や国民病ともいわれる誤嚥性肺炎ですが、音読習慣によってのどを使うことにより、のどの筋肉が衰えるのを防ぎ、発症リスクを下げることが期待できると言うのです。  「のどの筋肉は年齢とともに衰えていきます。本来食道に入るべき食べ物が誤って気管に入ることで起こる誤嚥性肺炎は、年を重ねるとともに気をつけたい病気のひとつです。予防のためにも、音読でのどの筋肉を自然に鍛えましょう」(本書より)  本書では、歯切れのよい小説や漢詩はもちろん、『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』といった歌舞伎のセリフや、『人形の家』のような戯曲なども収録しています。ただ読むだけではなく、歌舞伎や演劇の舞台を鑑賞したり、たとえば『金色夜叉』の銅像がある熱海など、文学作品のゆかりの地を実際に訪れたりすれば、音読の楽しみも倍増すると提唱しています。登場人物に成り切ったつもりで、歯切れがよいセリフを楽しんだら、ぜひ作品の舞台にも足を運んでみてはいかがでしょうか?
銀行にも"共感力"が必須? 金融庁担当記者が明かす「育てる金融」とは?
銀行にも"共感力"が必須? 金融庁担当記者が明かす「育てる金融」とは? 2019年4月から、金融庁が金融機関の検査を行う際に使用する手引・通称「金融検査マニュアル」が廃止されました。そもそもこの検査マニュアルは、バブル崩壊による不良債権問題に対応するために、緊急避難的なルールとして1999年から導入したものでした。  実は、この廃止をいち早く予測していたのが、共同通信社経済部記者で、金融庁担当として森前長官に密着してきた橋本卓典さん。2016年刊行のシリーズ1冊目『捨てられる銀行』で「金融検査マニュアルは廃止」と予言していました。  マニュアル廃止を受けて、各金融機関ではビジネスモデルの大幅な転換を余儀なくされることになりますが、その打開策として、シリーズ最新作の本書『捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む』では、顧客に共感できることが事業価値に成り得ること、そしてこれからは顧客を「育てる金融」(本書より)にシフトチェンジすべきと提唱しています。  たとえば、電子地域通貨「さるぼぼコイン」で全国から注目を集めた、岐阜県高山市の飛騨信用組合。  信用組合としては初めて、クラウドファンディングをスタートしたことで有名な飛騨信組ですが、担当者は「事業者と同じ目線のクラウドファンディングでワクワクすることをやる。一緒にコーディネートしながら走ろうと思いました」(本書より)と述べ、目先のリスクよりも、長い目で捉えて顧客に共感し、そのニーズに寄り添っていたことが、結果的に銀行側にも大きなリターンをもたらしたと言います。  ほかにも本書で取り上げている成功モデルが、山形県鶴岡市の鶴岡信用金庫。同市には、慶應義塾大学先端生命科学研究所をはじめバイオベンチャーが集積する「サイエンスパーク」が存在しますが、実はこの発展には鶴岡信金も貢献しています。当時の地域創生部長が若手ベンチャー起業家に共鳴し、事業計画の段階から協力、地域全体を巻き込んだ関係性を構築したのです。鶴岡信金では現在も「鶴岡信用金庫若手経営者塾−マネジメントキャンパス−」を開設し、地銀の枠を超えて、地元の未来を育てようと試みています。  金融業界が大幅に変わろうとしている今、キーマンに丹念な取材を重ね、明快な筆致でまとめた本書は、金融マンに限らずビジネスパーソンなら必読の1冊と言えるでしょう。
日本屈指の実力を誇る観光県は!? 旅の達人が教える最強観光案内
日本屈指の実力を誇る観光県は!? 旅の達人が教える最強観光案内 皆さんの中には、国内旅行に出かける際、事前にガイドブックを用意するという人も多いでしょう。けれど、その中に載っている滝や武家屋敷や「〇〇ゆかりの地」といった定番の観光スポットをおとずれて、それなりに満足はしたものの、「うーん、なんか違うんだよなぁ......」なんて思った経験はないでしょうか?  そもそも、皆さんが観光に求めるものは何でしょうか? 人それぞれかとは思いますが、もし自分が求めるものはベタな定番スポットなどではなく、なるべく意外なもの、知らなかったもの、不思議なもの、とりわけすごいものといった"手ごたえの感じられる場所"を見ることだと考えるなら、本書『ニッポン47都道府県正直観光案内』はぜひとも読むべき一冊といえるでしょう。  著者の宮田珠己さんは「旅をしまくりたい」と会社を退職して約20年、その言葉通りに旅行をしまくり、紀行エッセイストとして活躍しているというユニークな人。そんな彼が正直にいいと思う場所だけを厳選し、47都道府県別に紹介しているのですから、これを読めばみすみすつまらない観光地で過ごすハメになることなんてありえないということになります!  たとえば富山県。北陸新幹線が開通し東京方面からのアクセスは便利になったものの、富山ではなくその先の金沢を旅行先にするという人は多いはず。......でも、ちょっと待って! 「観光についていえば、実は日本屈指の実力を誇るのが富山県」だと筆者は本書で主張します。  立山砂防工事専用軌道トロッコや富岩水上ラインの遊覧船、立山黒部アルペンルートのトロリーバスやロープウェイなど、とにかく富山は乗り物天国。その魅力をひとことで言い表すならば「スペクタル」なところだそう。土木観光ともいえる壮大な景観を堪能できるのが富山ということでしょうか。......そう聞くと、がぜん行きたくなってきた!  ほかにも大分県は謎だらけの大魔境、青森県は日本屈指のSF県、真にダサい東京都......とワードを聞くだけで気になるものばかり(すべて筆者個人の感想ですが)。本書には絶景、奇景、珍妙な観光スポットが目白押しです。  そして、ガイドブックとしてではないもうひとつの楽しみ方が、「自分の出身県を読んでみる」というもの。世間一般の通説とは異なる見方が書かれているので、とても興味深く読めるはず。たとえば私の出身の三重県は伊勢神宮や伊賀忍者、熊野古道などが定番の観光スポットとして知られていますが、筆者は志摩スペイン村や長島スパーランドを挙げ、「実はアトラクション県だった」としているのには納得、そして感心です。  これからの春から夏にかけては旅行のベストシーズン。次の観光の行き先を決める一冊として、または日本各地の面白さを再発見する一冊として、皆さんも本書を手にとってみてはいかがでしょうか。

この人と一緒に考える

関西スパイスカレー人気店32軒店主が考えた全40種のとっておきレシピって?
関西スパイスカレー人気店32軒店主が考えた全40種のとっておきレシピって? 欧風、インド風、タイ風などさまざまな種類のあるカレー。独自の発達を遂げてきた日本においてカレーはもはや国民食といっても過言ではありませんが、最近ひとつのブームになっているともいえるのが「スパイスカレー」と呼ばれる類です。  スパイスの強烈の複雑な香りや味わいを楽しめるカレーのことですが、とくに熱い盛り上がりを見せているのが大阪。自らスパイスの研究を始めて店舗を構える店主が多かったり、他ジャンルとさまざまなコラボレーションをしたりなど、自由かつ独自性のある活動をおこなうお店が数多くあるのだとか。  そんな関西の人気スパイスカレー店32軒の店主が考えたスパイスカレーと副菜、スパイス料理、合わせて全40種のレシピを掲載しているのが『関西のスパイスカレーのつくりかた』です。本書に登場する旧ヤム邸、アアベルカレー、Yatara spice、森林食堂などの名店、関西の方ならご存じの方も多いのではないでしょうか。  さて、スパイスカレーとひとことで言っても、掲載されているレシピは実にバラエティに富んでいます。  たとえばアアベルカレーの店主が教えてくれるのは、日本でもわりと馴染みのある「ココナッツチキンカレー」。鶏もも肉や玉ねぎ、トマト缶、ココナッツミルクなどはお決まりの材料といえますが、ここに何種類ものスパイスが加わるのがスパイスカレーのスパイスカレーたるゆえん! クミン、コリアンダー、ターメリック、レッドペッパー、ガラムマサラ、カルダモン、クローブ、ブラックペッパーなど10種類近くものスパイスを使うレシピとなっています。  ほかにもドライキーマカレーやマトンカレー、エビのグリーンカレーといった定番から、「白身魚とホウレン草の四川風スパイスカレー」や「あんかけ油味噌キーマ」「鰹かおる豆カレー」などの変わり種まで、各店主考案によるさまざまなスパイスカレーのレシピを収録。もちろん、そこに使われるスパイスも多種多彩で、どんな複雑な味わいになるのか挑戦してみたくなるものばかりです。  なんとも奥深いスパイスカレーの世界。本書の最初には「スパイス辞典」なるスパイスの紹介もありますので、まずはそれぞれの特徴や効能を知ることから親しんでみるのもよいかもしれません。そこから実際にお店に食べに行ってみたり、スパイスショップを訪れてみたり、自分で作ったり、お店のイベントやコラボにも足を運んでみたり。興味を持てば持つほど、その世界は広がっていきそうです。とりあえずまずは、本書を一読するところから始めてみてはいかがでしょうか。
子宮系スピリチュアル、布ナプキン信仰... 女性を脅す"呪い"(?)の正体を検証
子宮系スピリチュアル、布ナプキン信仰... 女性を脅す"呪い"(?)の正体を検証 「生理が重いのは使い捨てのナプキンで子宮を冷やしているから」「添加物を過剰摂取すると、将来生まれる子供のアトピーやアレルギーの原因になる」......こんな話、皆さんも一度は耳にしたことありませんか?   一見、女性の悩みにやさしく寄り添った体(てい)ではありますが、「女性はこういうケアをしないと大変なことになる!」という刷り込みは、女性をむしばむ「脅し」であり「呪い」にもなりえます。しかも「アドバイザー」「セラピスト」といった肩書で専門家風の人が言っていたりするとなおさら......。  本書『呪われ女子に、なっていませんか?』は、子宮系スピリチュアルや布ナプキン信仰、冷え取り依存、デトックスにオーガニックといった産業の実態を、ときに面白おかしく、ときに真面目に検証した一冊。女性産婦人科医の宋美玄先生などへの取材対談も各章末にコラムとして挿入されており、医学的見地からもきちんと指摘や説明がされています。  著者は長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこに潜む「トンデモ」の存在を実感してきたという山田ノジルさん。たとえば第1章では、「女の幸せは、子宮を大切にすることから」という思想を持つ"子宮系女子"の実態を明かしています。  「子宮を大切にする」とはどうにも曖昧な言葉ですが、これは定期的に婦人科検診を受けるなどではなく、「子宮に聞き取り調査をして本音に従って生きると、心身の不調が改善、引き寄せの法則的にご利益もガッポガポ、人付き合いも恋愛も仕事もすべてがうまくいき、幸せになれるというミラクルが起きる」ということなのだとか。    さらに"子宮教"とでもいうべきこの思想のもとに、子宮委員長を名乗る女性による高額な講習会がおこなわれたり、「子宮の温度が上がる」との効果を暗にうたうジェムリンガ(膣に入れて使うヒーリンググッズ)が販売されたりも。「『子宮にいいこと(散財や奔放な性生活も含む)をしないと女性としての機能が危険にさらされる』『性的に潤うのが女の幸せ』なる呪いで女を縛る、脅し商法にしかなりません」と筆者は自身の考えを述べています。  そもそも「私たちの子宮ってそんなに冷えてるのか!?」という疑問がわくわけですが、本書掲載のインタビューでは宋美玄先生は「子宮だけ冷えること自体があり得ません」「だいたい、ちょっとでも解剖学や生理学を勉強したら『血行が悪いから云々』なんて、アホらしくて言えないはずです」とキッパリ否定しています。  この子宮ケアにはじまり、布ナプキン、オーガニック、冷えとり靴下など、本書で紹介されているコンテンツは、そこにくっつけて提唱される"効果効能"にとらわれなければ、本来どれも女性たちの選択肢を増やしてくれるもののはず。「ほどほどの距離感とゆとりで嗜好品的にたしなめば、そこに『呪い』は生まれません」との筆者の言葉どおり、私たちは正しい情報を冷静に見極めていく必要があるかと思います。その目を養うためにも、まずは本書を一読してみてはいかがでしょうか。
一つの物事の見方の本から物の味方を学んだ------アノヒトの読書遍歴:TAKAHIROさん(後編)
一つの物事の見方の本から物の味方を学んだ------アノヒトの読書遍歴:TAKAHIROさん(後編) 女性グループ欅坂46 の「サイレントマジョリティー」(2016年)や「不協和音」(2017年)の振り付けを担当し話題を呼んだ、振付師・ダンサーのTAKAHIROさん。実は本好きな一面もあり、小学生の頃は伝記を読んでいたそう。また、最近印象に残った一冊として、芥川龍之介の『河童』を紹介してくれました。そんなTAKAHIROさんに、前回に引き続き、おすすめの本について伺いました。
小学生の時にエジソンの伝記を読んで開発者に憧れた------アノヒトの読書遍歴:TAKAHIROさん(前編)
小学生の時にエジソンの伝記を読んで開発者に憧れた------アノヒトの読書遍歴:TAKAHIROさん(前編) ダンサー・振付師として活躍するTAKAHIROさん。大学入学後にダンスを始め、卒業後の2004年に単身渡米しました。全米放送のコンテスト番組「Showtime At The Apollo」でマイケル・ジャクソンを超える歴代最多の9大会連続優勝するなど多大な活躍を見せます。2014年に帰国した後は、アイドルグループ欅坂46 の「サイレントマジョリティー」(2016年)や「不協和音」(2017年)の振り付けを担当し話題を呼びました。そんなTAKAHIROさんは本好きでもあるそうで、普段はどんな本を読んでいるのでしょうか。日頃の読書生活について伺いました。
補助金は地方のガン!? 「地方のリアル」と「成功のコツ」がストーリー形式でまるわかり
補助金は地方のガン!? 「地方のリアル」と「成功のコツ」がストーリー形式でまるわかり  テレビや雑誌でもたびたび取り上げられる「まちづくり」。「地方に移住した若者が奮闘するサクセスストーリー」や「老人たちが手と手を取り合い支え合う心温まる物語」といった部分をフィーチャーして紹介されることも多いですが、実際にはきれいごとばかりでは済まされないもののようです。  『凡人のための地域再生入門』は、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事でまちづくり専門家として国内外で活動する木下斉氏による著書。地方衰退の「構造」とビジネスでの「変革手法」が122のキーワードとともに公開されており、SNSでも「#地元がヤバい本」というハッシュタグとともに話題を呼んでいる一冊です。  本書が特徴的なのは、単なるビジネス書ではなく小説仕立てになっているところ。あらすじはこちらです。  主人公・瀬戸淳の地元は、東京から新幹線で1時間、さらに在来線で20分という、人口5万人ほどのどこにでもある地方都市。ある日東京で働く淳に、母が「商売をやめ、店も家もすべて売り払い余生を楽しみたい」と言い出します。東京と地元を行き来し、廃業手続きや不動産売却といった“実家の片付け”に追われる淳ですが、「実家の片付け問題」は次第にシャッター街の再生、さらに地域全体の再生という思わぬ方向へと進んでいきます…………。  ストーリー形式で読み進める中で、重要なキーワードには参考書の注釈のような解説が出てきます。これが地方再生のリアルなところ、シビアなところにかなり斬り込んで書かれてあって興味深いです。  たとえば「公共開発の怖いところは、開発時に国からいくらもらおうとも、その維持費は自らが負担しなくてはならない」という箇所。「維持費は自らが負担」という部分がマーカー風に塗られ、「施設開発は、建てるときより建てた後のほうがコストがかかる。開発後の維持管理、定期的な大規模修繕、解体などトータルでかかる生涯費用を計算すると、一般的に建てるときにかかる開発費に対して3~4倍かかる」といったふうに、さらに詳しい説明が別枠でされています。  このあたりは、20年以上「まちづくり」の現場でさまざまな仕事を経験し、全国各地の大勢の未経験者にノウハウを伝えてきたという木下氏だからこそ書ける内容だといえるでしょう。  本書のタイトルには「凡人のための」という言葉がありますが、木下氏は「いつまで待っても地元にスーパーマンは来ない」と言っています。成功しているように見える地域のリーダーは一見、スーパーマンやヒーローのように見えますが、裏では事業や私生活でさまざまなトラブルに巻き込まれているかもしれない生身の人間です。そして、そもそも地域にスーパーマンは必要ではなく、それぞれの役割を果たす「よき仲間」を見つけ、地味であっても事業を継続していけば成果は着実に積み上がっていくというのが木下氏の主張です。  けれど、やはりそこで大切になってくるのが「ロジック」や「ノウハウ」や「エモーション」。地方再生やまちづくりに取り組む人はぜひ本書でそうしたところを学んでみてはいかがでしょうか。そして地元の将来を心配するすべての人にとっても、本書は有益な1冊になっているかと思います。
【本屋大賞2019】瀬尾まいこさん『そして、バトンは渡された』 「愛情を注ぐ相手があることは幸せ」
【本屋大賞2019】瀬尾まいこさん『そして、バトンは渡された』 「愛情を注ぐ相手があることは幸せ」 本日4月9日、東京・明治記念館で、全国の書店員が選ぶ「2019年本屋大賞」の発表会が開催され、作家・瀬尾まいこ(せお まいこ)さんの『そして、バトンは渡された』(文藝春秋刊)が大賞に輝きました。  授賞式では、ゲストプレゼンターとして昨年の受賞者、辻村深月さんが花束を贈呈。「この1年、次に自分はどなたにバトンを渡すんだろうと、一冊一冊本が出るたびに楽しみに読んでいました。この本は、読んで最後幸せな涙が溢れました。瀬尾さんにバトンを渡せて嬉しいです。おめでとうございます」と祝福の言葉を寄せました。  そして大賞受賞者の瀬尾さんは「素晴らしい賞をありがとうございます。今この壇上に立って、思っていた以上に嬉しくて感動しています。この本は、一人の女の子に、血が繋がっていなかったり、長い時間だったり、短い時間だったり、色々なかたちで親として関わっていく大人が出てきます。愛情を注がれることはもちろん幸せですが、愛情を注ぐ相手があることはもっと幸せなんだと思います」とコメントしました。  本作に登場するのは、17歳の少女、森宮優子。彼女は血の繋がらない親の間をリレーされ、4回も名字が変わっています。しかし当の本人は「困った。全然不幸ではないのだ」とひょうひょうとしていて......。身近な人が愛おしくなる、著者会心の優しい物語です。  受賞した瀬尾さんは、1974年、大阪府出身。大谷女子大学国文科卒。2001年、『卵の緒』で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年単行本『卵の緒』で作家デビュー。2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞。他『図書館の神様』『優しい音楽』『僕らのごはんは明日で待ってる』『あと少し、もう少し』『春、戻る』など著書多数。  本屋大賞は、出版業界活性化のため、全国の書店員が、年に1度、「一番売りたい本」を投票で選ぶもので、第16回目となる今回は、「2017年12月1日~2018年11月30日に刊行された日本のオリジナル小説」が対象となりました。1次投票には全国493書店より書店員623人、2次投票には308書店より371人の参加がありました。  「本屋大賞2019」ノミネート10作品の順位は以下の通り。 1位 『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ/文藝春秋 2位 『ひと』小野寺史宜/祥伝社 3位 『ベルリンは晴れているか』深緑野分/筑摩書房 4位 『熱帯』森見登美彦/文藝春秋 5位 『ある男』平野啓一郎/文藝春秋 6位 『さざなみのよる』木皿泉/河出書房新社 7位 『愛なき世界』三浦しをん/中央公論新社 8位 『ひとつむぎの手』知念実希人/新潮社 9位 『火のないところに煙は』芦沢央/新潮社 10位 『フーガはユーガ』伊坂幸太郎/実業之日本社 ■本屋大賞公式サイト http://www.hontai.or.jp/

特集special feature

    【速報】「本屋大賞2019」は、瀬尾まいこさん『そして、バトンは渡された』に決定!
    【速報】「本屋大賞2019」は、瀬尾まいこさん『そして、バトンは渡された』に決定! 本日4月9日、東京・明治記念館で、全国の書店員が選ぶ「2019年本屋大賞」の発表会が開催され、作家・瀬尾まいこ(せお まいこ)さんの『そして、バトンは渡された』(文藝春秋刊)が大賞に輝きました。  本作に登場するのは、17歳の少女、森宮優子。彼女は血の繋がらない親の間をリレーされ、4回も名字が変わっています。しかし当の本人は「困った。全然不幸ではないのだ」とひょうひょうとしていて......。身近な人が愛おしくなる、著者会心の優しい物語です。  受賞した瀬尾さんは、1974年、大阪府出身。大谷女子大学国文科卒。2001年、『卵の緒』で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年単行本『卵の緒』で作家デビュー。2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞。他『図書館の神様』『優しい音楽』『僕らのごはんは明日で待ってる』『あと少し、もう少し』『春、戻る』など著書多数。  本屋大賞は、出版業界活性化のため、全国の書店員が、年に1度、「一番売りたい本」を投票で選ぶもので、第16回目となる今回は、「2017年12月1日~2018年11月30日に刊行された日本のオリジナル小説」が対象となりました。 ■本屋大賞公式サイト http://www.hontai.or.jp/
    プーチンも学んだ諜報機関KGBの記憶術で脳のリミッターを解除せよ!
    プーチンも学んだ諜報機関KGBの記憶術で脳のリミッターを解除せよ! 敵の情報を得るといったミッションのために極秘に活動する「スパイ」。『ミッション・インポッシブル』や『007』シリーズなどの映画を観ていると、派手なアクションやガジェット的な小道具がまず思い浮かびますが、実はスパイの装備で最も重要なものは「スパイ本人の頭脳」なのだとか。   中でも記憶力はスパイの任務に欠かせないもので、膨大な情報を完全に記憶して正確に再現できなくてはならないといいます。  その能力、スパイじゃない私たちにも少しでいいから分けてほしい......! ということで、記憶力を鍛え、思考を研ぎ澄ます方法をさまざまな演習をとおして学べる一冊がカミール・グーリーイェヴ デニス・ブーキン著『KGBスパイ式記憶術』。本国ロシアのみならず、アメリカ、中国、ヨーロッパなど世界13か国で刊行されたベストセラーが、ついに日本にも上陸したというわけです。  本書がユニークなのは、スパイ小説さながらのスリリングなストーリーが用意されている点。  1954年、モスクワ大学で心理学を研究するA・N・シモノフは、プーチンも在籍した東西冷戦時代最強の情報機関KGB(ソ連国家保安委員会)にスカウトされ防諜活動に従事することに。果たしてシモノフはスパイとして成長し、ミッションを遂行できるのか......!?  純粋にストーリーの続きが気になって、結末を知りたくて仕方がなくなる人もいるに違いありません。  そしてその途中にはさまれているのが「記憶力テスト」や「脳のトレーニング」といった演習問題。たとえば、「演習11」では「結び付けてみる」という問題が出されます。「スイカ/バット ヘリコプター/ドレス 木/電話」といったペアになっている10の単語を60秒間で覚え、時間が来たらそれぞれの単語とペアの単語を声に出して言ってみるというもの。  これはまず、ペアになっている単語を互いに関連付け、それを視覚的にイメージし、どのように関連付けたかを記憶するとよいそう。すばやく連想する能力、さまざまな物事を互いに関連付ける能力は、どの記憶術でもきわめて重要だといいます。たしかにこうしたさまざまな訓練を地道に積んでいけば、個人の記憶力を最大限に高められるかもしれません。  記憶力は勉強だけに限らず、ふだんの生活やビジネスにおいても必要なもの。また、本書で訓練を重ねれば、情報をあつかう力、タイムマネジメント力、コミュニケーション力も向上するとのことで、記憶術以外においても有益な能力が身につくはずです。ぜひ皆さんも諜報部員になった気分で、さまざまな演習を通して自身の脳のリミッターを解除してみてください。
    【「本屋大賞2019」候補作紹介】『ベルリンは晴れているか』――戦後・戦中のドイツを追体験できる歴史ミステリー
    【「本屋大賞2019」候補作紹介】『ベルリンは晴れているか』――戦後・戦中のドイツを追体験できる歴史ミステリー BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2019」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは深緑野分著『ベルリンは晴れているか』です。 ******  本書は第160回直木賞候補をはじめ、第9回Twitter文学賞で国内編第1位、「このミステリーがすごい!2019年版」国内部門2位など多くの場で評価された注目作です。  舞台は第二次世界大戦直後の1945年7月、ナチス・ドイツが降伏し米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある緊迫した状況のもと、敗戦により荒廃した街で歴史ミステリーが展開されます。ちなみに同時期、米英中の3カ国が日本の戦争終結条件を示したポツダム宣言を発表した場所も、このベルリン郊外のポツダムです。  主人公は、米軍の兵員食堂でアメリカ人から「ブス」などと罵声を浴びながらも、たくましく働くドイツ人の女の子アウグステ・ニッケル、17歳。戦時中に家族を亡くし、天涯孤独の身でもあります。そんな彼女はある日のこと、ソ連のNKVD(内務人民委員部)から呼び出しを受けます。アウグステにとってソ連は、過去の因縁から複雑な思いを抱えていて......。  そこで待ち受けていたのは、かつて身寄りのない彼女を世話してくれた恩人クリストフ・ローレンツの死でした。米国製の歯磨き粉に毒を仕込まれて死んでいたというのです。彼女はNKVDから疑いの目を向けられつつ、行方不明になったクリストフの甥には重要参考人として捜査の手が及びます。  アウグステはNKVDの人手不足を理由に、クリストフの甥の捜索を依頼されます。はからずも、現地の地理に詳しい泥棒で元映画俳優のカフカを連れ立って旅立つことになります。この「本編」ではたった2日間の道中での出来事が濃密に描写されます。  物語の途中で挿入される「幕間」では、なぜ彼女が両親を亡くしたのか、どうして彼女がいつもケストナーの英訳版『エーミールと探偵たち』を大切に持ち歩いているのか、アウグステの過去が徐々に明かされていきます。  同時に戦時中のドイツという国も描かれます。街の様子や戦争の悲惨さがこれでもかと、事細かに描写されており、著者の深緑さんが実際にその場にいたのではないか......そう疑ってしまうほどの生々しいまでのリアルさに驚くことになるでしょう。  本編と幕間から事件の謎が解明される本書。そんなミステリー要素を楽しめることはもちろん、歴史小説としてヒトラーの狂気さ、戦争という悲劇が嫌というほど感じとれる価値ある1冊でもあります。あなたは歴史から目をそらさずに読むことができるでしょうか?
    【「本屋大賞2019」候補作紹介】『フーガはユーガ』――双子が特殊能力の"アレ"で「悪」に立ち向かう物語
    【「本屋大賞2019」候補作紹介】『フーガはユーガ』――双子が特殊能力の"アレ"で「悪」に立ち向かう物語 BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2019」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは伊坂幸太郎著『フーガはユーガ』です。  *******  伊坂幸太郎さんの作品の醍醐味ともいえる華麗な伏線回収はもちろん、読後に悲しくもどこか優しい気持ちになれる伊坂ワールドの魅力を味わえる1冊です。  双子の兄弟、常磐優我と風我。2人は幼いころから、父親に日常的に暴力を受けており、母親にはそれを見て見ぬふりされる過酷な家庭環境で育ちました。そんな厳しい生活の中で、彼らは双子に備わった特殊能力"アレ"を初めて体験します。  ある日、そんな優我のもとに、フリーのディレクターを名乗る男・高杉が取材にやってきます。テレビの新番組のネタに困っていた高杉は、"アレ"としか説明できない不思議な映像を発見し、そこに優我が映る理由を知りたかったのです。「面白ければテレビ出演」という条件のもと、優我はその特殊能力にまつわる過去のエピソードを語り出します。  双子は"瞬間移動"で入れ替わることができるのです。それは、「2人の誕生日」にだけ、しかも2時間おきのタイミングで。幼少期から大人に至るまで、自らも過酷な境遇にもかかわらず、似た環境に身を置く人々を見ると、「誰かを支配する奴は気に入らない」とじっとしていられません。まるでヒーローのごとく、あっと驚く作戦で「悪」を退治していきます。  物語では様々な「悪」が描かれますが、注目すべきは、度々登場する小学生女児をひき逃げした未成年の男の存在。中学時代、風我が家出していた被害者の女児に、"お守り"として汚れたシロクマのぬいぐるみを渡していた接点から、彼らにとって忘れられない事件でした。その男が次第に2人の人生に影を落とし......。父親という「絶対悪」の顛末、そして、ひき逃げ犯という「悪」の意外な正体とは?  全体的に暴力やいじめシーンなど暗い話が多い物語ではあるものの、クスっとくるユーモアに富んだ優我と風我の掛け合い、2人を優しく見守る大人の存在など所々に救いも存在します。読後にはきっと双子のファンになっているはず。  勉強ができて大学に進学した優我。運動神経が良くて中学卒業後に働きだした風我。対象的な人生を歩む2人でも、心はいつもつながっています。コインの裏と表のように2人で1人"唯一無二のヒーロー"の目撃者になってみませんか?
    成婚率80%を誇る婚活アドバイザーが送る、本当の幸せを掴むための婚活テクニック
    成婚率80%を誇る婚活アドバイザーが送る、本当の幸せを掴むための婚活テクニック 以前、BOOKSTANDニュースでご紹介したこともある『男の婚活は会話が8割 「また会いたい」にはワケがある!』。婚活を成功させるための会話術について男性向けにレクチャーした一冊でしたが、女性向けに書かれたものが『なぜか9割の女性が知らない婚活のオキテ』といえるかもしれません。  著者は、結婚相談所マリーミー代表で、婚活アドバイザーとして成婚率80%を誇るという植草美幸さん。「"出会えない"には理由がある」ということで、本書では勝手な思い込みや逆効果な行動などNGな婚活の取り組み方に警鐘を鳴らし、本当の幸せをつかむための婚活テクニックを教えてくれます。  本書ではチャプター1の「出会い」に始まり、「デートまで」「初デート」「2度目以降のデート」「おうちデート」「家族に会う」「結婚が決まるまで」「婚約から結婚まで」とチャプターごとに順を追って、それぞれのNGを詳しく解説しています。  たとえば「合コンや婚活パーティーに積極的に参加する」。これは一見、婚活を成功させるにはとても有効な方法に思えます。でも、植草さんからすると"NG"! なぜなら「そもそも合コンは遊びの場であって、結婚相手を探す場ではありません。婚活パーティーにしても、"婚活"とついているだけで、合コンと同じ。真剣に結婚を考えている人が参加するところではないのです」「本気で考えているなら、合コンや婚活パーティーは、いい加減、卒業しましょう」とのこと。そのほか、友達の紹介や出会い系アプリ、フェイスブックなどで相手を探すのも植草さんはNGとしています。  デートをスタートさせて以降もNG事例はいっぱい。「勝負服でデートする」「お店やメニュー選びは、常にお任せ」「デート後すぐに、お礼のLINEやメールをする」「手料理をふるまう」などは避けるべきだそう。なぜダメなのか......その理由はぜひ自身で読んで確かめてみてください。  皆さんの中には本書を見て「こんなにもやっちゃいけないことがあるなんて!」とオキテの多さに驚く人もいるかもしれません。けれど、本書はあくまでも「結婚というゴールへたどり着くためのテクニック」が書かれた一冊。自由な恋愛を楽しむのではなく、結婚という明確な目的を果たすためには"正しい戦略"というものがあるのだということを感じさせられます。  日本では現在、18歳から34歳までの女性の約6割に恋人がおらず、30代後半の未婚男女にいたっては約8割に恋人がいない状況だと本書ではふれています。正直、結婚願望がある人にとってはなかなか苦しい現状といえますが、だからこそ、正しいテクニックを知ることが効果的となってきそうです。  そう考えると、「出会いがない」「周りにいい男性がいない」と言っている女性は、もしかしたら戦略ミスを犯している可能性も......。本書をうまく活用して"婚活のオキテ"を身に着け、楽しく戦略的に行動すること。これこそが結婚への最短距離になりうることもあるかもしれません。

    カテゴリから探す