

植朗子
伝承文学研究者
プロフィール
伝承文学研究者。四天王寺大学准教授。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。最新作『鬼滅月想譚』(朝日新聞出版)が好評発売中。
植朗子の記事一覧



映画『さんかく窓の外側は夜』――除霊に男同士の「快感」が含まれる深い意味
公開中の映画『さんかく窓の外側は夜』は、ヤマシタトモコ氏によって『MAGAZINE BE BOY』で2021年1月号(2020年12月7日発売)まで連載された漫画が原作になっている。最終巻の発売を2021年3月に控えて、これまでの発行部数は130万部。「霊能力」と「除霊」「呪術」がキーワードの人気ミステリー作品である。映画では「除霊」を通してさまざまな人間模様が交錯する謎解きが描かれるが、原作ではセクシャルな暗喩を含む描写も多い。なぜ除霊に、男同士の“性的快感”の表現が多く用いられているのか。その意味を考えると、物語の深みがより理解できるようになる。 (以下の本文には、映画と漫画原作のネタバレが含まれます)

『鬼滅の刃』に描かれた「呪い」――産屋敷耀哉と鬼舞辻無惨の“頂上決戦”の裏にあったもの
漫画『鬼滅の刃』は、鬼を討伐するための組織・「鬼殺隊」の物語だ。鬼殺隊の総領・産屋敷耀哉と、「鬼の始祖」である鬼舞辻無惨は、敵対する組織の長として登場する。この産屋敷耀哉は、隊士たちからの人望を一心に集める人格者として描かれながらも、鬼殺に対する恐ろしいまでの「執念」をみせる。「子どもたち」と呼ぶ隊士の多くが命を落とし、自らの体も病に侵されていくなかでも、耀哉は鬼舞辻を中心とした「鬼」と戦い続けることをやめない。そしてまた、鬼舞辻も耀哉に異様なこだわりをみせる。その根底には、2人が決して逃れることができない「呪い」が横たわっていた。(以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます)


『鬼滅の刃』の人気キャラ・冨岡義勇が「嫌われ役」として描かれる意味
大ヒットアニメ『鬼滅の刃』に登場するキャラクターの中で、常に人気上位にランクインしている水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)。「週刊少年ジャンプ」の2017年47号の投票では4位、20年47号では2位と、その人気は根強い。コミックス第1巻から登場している義勇は、鬼殺隊の柱として常に前線で戦い、主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)と禰豆子(ねずこ)兄妹の恩人として慕われているが、ときおり、ほかの「柱」たちからは厳しい目を向けられる。人気キャラにもかかわらず、作中では冨岡義勇が「嫌われ者」としても描かれる理由を考察した。 (以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます)


『鬼滅の刃』の鬼「童磨」が“同情できない鬼”なのに人気なワケ
2020年の年末に、映画興収がついに歴代最高を記録した「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」。映画では「上弦の参」と呼ばれる鬼・猗窩座の強さにも注目が集まった。鬼の中でも桁違いな強さをみせる「上弦の鬼」を、その特性ごとに分類していくと、上弦の弍・童磨だけが異質であることに気づく。童磨のエピソードには、鬼らしい残酷さ、うそに満ちた感情表現、他人への優しさの欠如など、マイナスの要素が多く盛り込まれている。「鬼にならざるを得なかった」同情的なエピソードは皆無なのだ。にもかかわらず、童磨はなぜ人気キャラクターなのだろうか? (※以下の記事には、『鬼滅の刃』コミックス既刊分のネタバレが含まれます。)

甘露寺蜜璃と胡蝶しのぶ 『鬼滅の刃』で2人の「女神(ミューズ)」が必要だった意味
2020年後半の話題をさらった漫画『鬼滅の刃』と「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の大ヒット。鬼と戦う「鬼殺隊」の最強の剣士たち「柱」には、2人の女性剣士、甘露寺蜜璃と胡蝶しのぶが登場する。2人は、これまでの少年漫画における女性キャラクターとは一線を画す位置付けにあり、戦いの女神のように、鬼vs人の戦況に影響を及ぼす。本来「女神」とは、神話などに登場する、女性の姿をした神的存在を意味する。しのぶと蜜璃は自らの身を賭して戦い、命を救われた人々から「女神」のように敬われ、愛された人物である。戦いの女神(ミューズ)として物語の中で重要な役割を果たす、甘露寺蜜璃と胡蝶しのぶについて考察する。 (※以下の記事には、『鬼滅の刃』コミックス既刊分のネタバレが含まれます。)
