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大川恵実

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大川恵実の記事一覧

少年アヤちゃん焦心日記
少年アヤちゃん焦心日記 アイドルにはまれば、CDを大量に買い、追っかけをする。韓国料理店の店員に一目惚れすれば、大手音楽プロダクションの社員だとウソをついて関心を引き、連日のようにその店に通う。のめりこんだらトコトン突き進むのが、本書の著者、少年アヤちゃんだ。 「新しい文章家」として才能が注目されるアヤちゃんの二作目となる日記文学は、前作よりも自分の内面に深く潜り込むような作品となっており、発売後すぐに増刷された。  アヤちゃんが綴る日記は、日々、波乱に満ちている。自称していた「オカマ」をやめたこと。電車で痴漢された中年男に連れられて、一緒に個室トイレに入ってしまったこと。14歳のとき、母親がアヤちゃんの入る風呂に入ってきたこと。一つひとつの出来事や思い出が嵐のように到来し、それが過ぎ去るとアヤちゃんはじっと自分を見つめ、起きたことに向き合い、解を得ようともがく。  痛みを伴うその工程が、繊細で圧倒的な文章力で描かれ、目を離すことができなくなる。アヤちゃんは、毎日進化している。
キルギスの誘拐結婚
キルギスの誘拐結婚 窓辺で母親に抱かれ、赤ちゃんが嬉しそうに笑う。そんな穏やかな写真のページをめくると一転、髪を振り乱し嫌がる女性の姿が飛び込む。「誘拐結婚」の現場の写真だ。  本書は、写真家の林典子さんがキルギスに5カ月滞在し、男性が女性を誘拐する現場や、結婚式、結婚後の生活などを収めた写真集。  結婚を断られたから、一目ぼれしたからなど、男たちはさまざまな理由で女性を誘拐し、自分の自宅へと連れていく。未婚の女性が男性の家へ入ることは、「純潔」を失ったとみなされる上に、一家総出で女性を説得にかかる。何時間もの抵抗の末、ほとんどの女性が無理やり結婚させられる。  だからといって、女性が皆、不幸になるわけではない。幸せだと話す女性も多い。その一方で、夫から暴力を受ける女性や、レイプされ、自殺した女性もいる。キルギスに「慣習」として存在する誘拐結婚を、私たちの価値観で一方的に否定できるのだろうか。  呆然とする顔、穏やかな顔、眉間にしわの寄った顔、遠くを見つめる顔。女性の表情が、心を揺さぶってくる。
1000人の患者を看取った医師が実践している 傾聴力
1000人の患者を看取った医師が実践している 傾聴力 もしあなたの大事な人が、何かに悩み、落ち込んでいたら、どう支えますか──。  終末期の患者を千人以上看取っている緩和医療医である著者は、死を前に悩み苦しむ患者を「傾聴」で支えてきた。  「傾聴」は苦悩を癒やし、乗り越える手段を提供するという。本書は、主に終末期の患者とのやり取りを事例に、正しい「傾聴」とは何かを綴っていく。  その人が何に苦しんでいるのかを知り、答えを見つけるまでそばにい続けること。悩んでいる人が、人生に新しい意味を見いだせるように支援することなど、聴き手側の心構えをまず説く。そして、話を聴く際のテクニックは、私たちの日常生活で明日からでも使えそうだ。たとえば、机で話を聴くときは、並んで座るか、対角線上に座る。相手の顔を見ながら話すが、時に視線を外す。優しい顔でしっかり頷きながら話を聴くなど。  支えることはたやすくない。何よりも、聴き手側の人間性が要求される。しかし人を支えられるのは人だけだ。これからの高齢化社会に「傾聴力」は必須だろう。
大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた
大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた 最近だと「カーネーション」が話題となったが、朝ドラを何年も習慣的に見続けている人は少なくないだろう。著者も「マー姉ちゃん」(1979年)に始まり、6歳の頃から全て見ており、日本人にとって朝ドラとは何なのか、そんな疑問から筆を執っている。  朝ドラに登場するヒロインや家族、恋愛や結婚を丁寧に分析していくと、実に色濃く、女性の生き方や時代性が浮かび上がってくる。たとえば、朝ドラ人気に火をつけた「おはなはん」(1966年)では、ヒロインは再婚の話を断り、子どものために生きていくことを選ぶのだが、1986年の男女雇用機会均等法元年に放送された「はね駒」は、女性新聞記者の半生を描き高視聴率を取った。2000年の「私の青空」では、初めてシングルマザーが題材となっている。  ドラマ制作に携わったスタッフへの取材も多く、その裏話がおもしろい。社会進出していく「はね駒」のヒロインの言動が「かわいくない」と、男性スタッフに不評だったという話には苦笑いしたが。
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