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週刊朝日

第1201回 空見上げ 何か言いたげなゴロー
第1201回 空見上げ 何か言いたげなゴロー ゴローという名の犬(写真)を飼っている。  雄、一見チョコラブ風の雑種。時々「土佐犬?」と聞かれるが、ゴローはあまりうれしそうではない。  朝、まだ明けきらない5時前、階下でゴローが第一声をあげる。散歩の催促だ。  外に出ると、ゴローは喜んで全身を躍らせ、私を急かすように歩きだす。  草むらではしゃぎ、山の鳥を追い、ため息をつき、空を見上げる……。  12歳を超えて毛は色褪せ、口の回りには白いものが目立つ。しかし、今でも悲しいくらいすべてに全力だ。吠え、走り、食べ、家族を大歓迎する。  ところが、この家族思いが大問題を引き起こした。  飼い始めて1年たったころのことだ。ある日、保健所の職員がやってきた。  家族に向かって吠えるときのゴローの声は、他人の耳には怒りまたは抗議の声に、甘える声は悲嘆のうめきに聞こえるらしい。  保健所の人に「近所から犬を虐待しているという知らせがあった」と言われ、応対に出た妻は絶句。  ゴローがあまり吠えないよう、しつけ本を手当たり次第に購入し、声が響かないよう小屋を移動させたり板囲いを作ったりした。訓練士の指導も受けさせた。  結果はどうかといえば、「なんだかなー」というのが実感だ。犬を飼うこと自体、虐待の要素があるのでは?と思うことさえある。  とにもかくにも、それから11年の歳月が流れた。  散歩の途中、私はゴローに話す。「かんべんな、もっといい飼い主がいたはずだね」。こうも言う。「お前はダメ犬だな。損したよ」  ゴローは立ち止まり、いつものように空を見上げる。何か言いたげであったが、また元気に歩き始めた。  くよくよ馬齢を重ねる私よりゴローははるかに偉い、なんだかそんな気がする。
民進・野田幹事長の“永い言い訳” 「一本化の効果はあった」
民進・野田幹事長の“永い言い訳” 「一本化の効果はあった」 先月行われた衆院補選(東京10区、福岡6区)で大敗した民進党。野党共闘の足並みの乱れが目立つが、原発再稼働が争点となった新潟県知事選の対応などをめぐって支持母体の連合との仲もギクシャクしている。さらに、蓮舫代表の「衆院くら替え案」の浮上で党内で反発も。八方ふさがりの現状をどのように捉えているのか。10月26日、野田佳彦幹事長に聞いた。
誰も知らない世界のことわざ
誰も知らない世界のことわざ こんなことを知っていたからといって何の得にもなりゃしないけど、言語の多様性を知るには有用かも。エラ・フランシス・サンダース著・前田まゆみ訳『誰も知らない世界のことわざ』は、世界中の言葉から拾い集めた51のことわざに、短い説明と絵をつけたちょっと変わった絵本である。  人間の考えることなんて似たり寄ったりですからね。すぐ意味のわかることわざもある。オランダ語の〈テーブルクロスには小さすぎ、ナプキンには大きすぎる〉は「帯に短したすきに長し」とほぼ同じ。ブルガリア語の〈一滴一滴がいつしか湖をつくる〉は「塵も積もれば山となる」だ。  意味は同じでも表現がステキなのもある。セルビア語の〈彼の鼻は、雲をつきやぶっている〉は〈舞い上がっていて、うぬぼれている〉の意味だから「天狗になる」と同じだが、こっちのほうがややロマンチック。ポルトガル語の〈ロバにスポンジケーキ〉は「猫に小判」「豚に真珠」と同じ意味だが、ちょっとメルヘン。アラビア語の〈ある日はハチミツ、ある日はタマネギ〉は「楽あれば苦あり」の意味だと想像がつくけど、こっちのほうがおいしそうだ。  しかし、意味がまるで想像できないことわざもあるわけで。スウェーデン語の〈エビサンドにのってすべっていく〉が〈働かずに安楽に暮らしている〉の意味だといったい誰が思うだろう。〈ザワークラウトの中で自転車をこぐ〉というフランス語はどうか。〈ガレージにいるタコのような気分〉というスペイン語は? ザワークラウトとタコはじつは同じ意味で、「お手上げ状態」「手も足も出ない」を指すそうだ。  動物と食べ物のことわざが多いのは、生活に密着しているせいか。ちなみに日本語からピックアップされたことわざは〈サルも木から落ちる〉と〈猫をかぶる〉の二つ。〈ロバにスポンジケーキ〉や〈ザワークラウトの中で自転車をこぐ〉に比べると、あんまりおもしろくないな。シュールさで肩を並べるのは「イワシの頭も信心から」とかですかね。ちがうか。
いま世界の哲学者が考えていること
いま世界の哲学者が考えていること 20代のころは、「現代思想」や「エピステーメー」などの雑誌を、「流行通信」や「ブルータス」と同じような気分で買い、最新流行の思想をチェックしていた。30年以上も昔のことだ。書店も思想・哲学の棚は熱気を発していた。ニューアカ・ブームなんていわれていた時代だ。  最近はどうなっているのだろうと思い、岡本裕一朗『いま世界の哲学者が考えていること』を読んでみた。世界の哲学の最前線について、わかりやすく、網羅的に紹介した本である。門外漢に向けたガイドブックだ。  いやはや、世界は(あるいは人類は)とんでもないことになっています! 人間が置かれている環境がこの数十年で大きく変わり、哲学者たちが考えるべき深刻な課題もたくさん出てきている。  たとえばIT革命とBT(バイオテクノロジー)革命。IT革命で便利になったことは多いが、世の中が監視社会化するなどの問題も抱える。人工知能が進化して人間の能力を超えたとき、人類は、そして世界はどうなるのか。  BTによって医療は急速に進歩している。ぼくらの寿命は延び続け、不老不死へと近づいている。「生」と「死」、「人間」という概念そのものが変更を強いられている。  そのほか、資本主義は21世紀でも通用するか、宗教はどうなるのか、地球環境はどうなるのか、考えるべきことがたくさんある。  本書を閉じて思った。日本の哲学者たちも社会の諸問題について、積極的に発言して欲しい。メディアも哲学者の意見をもっと紹介して欲しい。彼らの意見は、ぼくらが考える補助線になるのだから。

この人と一緒に考える

究極にうまいクラフトビールをつくる
究極にうまいクラフトビールをつくる ビール離れが進む中、動き出したキリンビールの異端社員の挑戦を追った一冊。大量生産のビールづくりに背を向け、社内の反対にあいながらも個人の嗜好に合わせた「クラフトビール」の専門店を出店するまでの道のりを描く。  ドラマかと思うほど、登場人物は個性的だ。「淡麗」「氷結」などヒット商品を連発し、ビールでの世界平和への貢献を真剣に目指す奇才、「ビールの精霊」と話す凄腕の醸造技術者、会社員には見えない伝説の営業マン。本書が秀逸なのは彼らをスーパーマンのように扱わない点。異端とはいえあくまでも会社員であり、葛藤を抱えている。プロジェクトがゆっくりと前進する現実を丁寧に辿っており、読み手は共感を抱くはずだ。読みながら、飲みたくなる。彼らの挑戦は間違っていなかったのだろう。
アイ・ラブ・ユー イエス・アイ・ドゥー
アイ・ラブ・ユー イエス・アイ・ドゥー 加山雄三の作曲家としての別名「弾厚作」作品の普遍性と不変性。ピンキーとキラーズの“夜明けのコーヒー”やザ・ピーナッツの“靴下直してるのよ”などちょっとドキリとするフレーズを歌詞にちりばめた、作詞家・岩谷時子の世界。ゆず「栄光の架橋」が、「栄光“へ”の架け橋」でないことの意味とは。あこがれのハワイ、「歌本」の変遷……。  作曲者経験もある著者が「私的『昭和大衆歌謡考』」と銘打つ歌謡曲コラム集の第3弾。“和製ポップス”の登場から初期の大瀧詠一あたりの年代を中心に、日本のポップスが広がりをみせていく流れを独自に考察したコラムで構成。  一部のCDは中の曲も聞かれない“お布施アイテム”になった今。街に「うた」があふれていた時代の大衆歌謡を再考察してみたい。
燈火
燈火 私小説の大家である作家の最後の連作短編集。自らに流れる血を肯定できず、苦しんだ物書きの主人公が築いた家庭の日常を描く連作『素顔』の続編になる。  50代半ばになった主人公は、妻と娘3人と東京で暮らしている。物語は、吐血した主人公が病院の個室で臓腑が破れる音を回想する場面に始まる。縁側の揺り椅子で妻がひっそりと泣いていたと聞かされ、妻に問いただすと、妻は夫の希望で染髪をやめたものの、知人に言われた言葉を吐露する「涙」。夜が明けたばかりの時間に台所でしのびやかな物音を立て、厚焼き卵をこしらえていた長女が「一番気の合う男友達」に会ってほしいと話す「春」。平穏な暮らしの中に歳月の深まりが感じられ、9話目の未完が惜しまれる。巻末に長女の文章と、佐伯一麦による解説が添えられる。

特集special feature

    狙いは日本の医療保険制度? 米大統領選後に始まる「TPP再交渉」
    狙いは日本の医療保険制度? 米大統領選後に始まる「TPP再交渉」 米大統領選で「TPP反対」が大きなテーマになったことで、米国が日本にさらなる譲歩を求める“極秘シナリオ”が動き始めている。安倍政権は「再交渉はない」と強気だが、医療保険や農産物などの分野に、米国は狙いを定めている。新大統領の誕生で、日本はどう変わるのか。
    予約殺到! ノートPC型電気自動車持ち運ぶクルマの未来は…
    予約殺到! ノートPC型電気自動車持ち運ぶクルマの未来は… 自動車をカバンに入れて持ち運ぶ? 驚きのコンセプトの電気自動車が登場した。ノートパソコンのような形態で四つの車輪がついており、地面に置いて上に乗ると走りだす。その名も「WALKCAR(ウォーカー)」。歩く(WALK)と車(CAR)を掛け合わせた。自動車というより電動のスケートボードにも見える。

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