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BOOKSTAND

アウトドア歴40年以上の著者が伝授する「キャンプで役立つTIPS集」
アウトドア歴40年以上の著者が伝授する「キャンプで役立つTIPS集」 すっかりブームと言っても過言ではない「キャンプ」。キャンプをテーマにした漫画やテレビドラマが人気を博したり、芸人さんやタレントさんがキャンプ好きを公言したり。そうした様子を見て、今年こそキャンプデビューしたいと心に誓っている皆さんも多いのではないでしょうか。また、すでにある程度キャンプ慣れしている人は、よりさまざまな場所へ出かけてみたいとうずうずしているところかもしれません。  そんなキャンプに興味を持つすべての皆さんの役に立つのが『キャンプ雑学大全 2020 実用版』。アウトドア歴40年以上という著者の牛田浩一さんが、これまでに培ってきたリアルな知恵の数々をわかりやすく伝授してくれる一冊です。  INDEXを見てみると、【準備編】【設営編】【実践編】【心得編】、さらにその後に【基礎の基礎編】となっており、本書を読めばキャンプに関する知識を一通り得られるでしょう。全部で168個のキャンプ雑学が掲載されており、"はじめてのキャンプは近場から始めるのが理想""キャンプの始めたては普段着の延長でもOK"といったキホンのキから載っていて、初心者でも安心です。  また、"ホットサンドメーカーは小さなフライパンと思え""簡易でも防寒効果は抜群 新聞紙+ラップ=腹巻き"など、キャンプ経験者にとってもプラスアルファで参考になる情報も。それぞれのキャンプレベルに合ったハックを身に着けられることと思います。  このほか、アウトドアといえば自然災害やケガ、トラブルなどもつきものですが、"太い枝やペグが刺さったら絶対に抜かずに医療機関へ""川の中州でのサイト設営は大事故につながる可能性あり"といった雑学も紹介されており、困ったときの「お悩み解決本」として使うこともできそうです。  文章が無駄に長くないのも本書の魅力。1ページに載っているのは、格言形式の言葉とそれに対する簡潔な解説文。より詳しく知りたい人には、ページの下のほうに「チョイ足し知識」として著者のコメントが用意されているというスタイルです。手描きのイラストもところどころに挟まれており、これもシンプルなタッチで情報がすっと入ってきます。  このほか面白いのが、途中に挟まれている「牛田のなんでもNo.1×80Answers」というコーナー。「荷積みに適したクルマNo.1は?」「持っていきたい万能調味料No.1は?」「最適なキャンプ人数No.1は?」といった質問に対して、著者が回答しています。「さすがキャンプのプロ!」な回答の数々は、目からウロコであるとともに今後の参考にしたくなること請け合いです。  このように、読むだけでキャンプ経験値を上げてくれそうな本書。キャンパーの必読本として、皆さんの手元に置いてみてはいかがでしょうか?
【「本屋大賞2020」候補作紹介】『店長がバカすぎて』――書店員として奮闘する主人公に共感し、思わず応援したくなる!
【「本屋大賞2020」候補作紹介】『店長がバカすぎて』――書店員として奮闘する主人公に共感し、思わず応援したくなる! BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2020」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは早見和真著『店長がバカすぎて』です。 ******  デビュー作の『ひゃくはち』、第68回日本推理作家協会賞を受賞した『イノセント・デイズ』、白濱亜嵐さん主演でドラマ化もされた『小説王』など、数々のベストセラーを世に送り出している早見和真さんの新作となるのが本書です。  主人公の谷原京子は28歳、独身。本が何よりも好きな彼女は現在、「武蔵野書店」吉祥寺本店で文芸担当の書店員として働いています。そして、本のタイトルにもなっている「店長」というのが彼女の上司にあたる山本猛(たける)。つかみどころがない「非」敏腕な店長のもとで京子がなんとか毎日をやり過ごせているのは、憧れの先輩書店員・小柳真理の存在があるから。しかしある日突然、小柳が店を辞めることになってしまい......。  新刊の推薦コメント執筆や作家によるサイン会、客からのクレーム対応など、書店の内情を臨場感たっぷりに描いている本書。そのあまりのリアルさに、全国の書店員から驚きや共感の声が沸き上がっているといいます。本や本屋さんが好きな人、書店員の仕事に興味を持っている人には、とても惹きつけられる設定かと思います。  しかし、それにとどまらず、日々葛藤しながら働くすべての人たちにとっても「自分の物語」として読めるのが本書の良さ。軽薄で頼りない上司に振り回されたり、薄給で契約社員という立場に不安を感じたり、次々と降りかかるトラブルに「今度こそ辞めよう」と本気で思ったり......。こうした京子の姿に自分を重ね、感情移入してしまう人はきっと多いに違いありません。  さらにそうした中に、ロマンスや謎解きも含まれているという贅沢さ。京子の恋のゆくえやファンである覆面作家の正体など、最後の1ページまで読者を飽きさせない展開となっています。そして「バカすぎて」とタイトルで罵られている店長が、章を追うごとに魅力的に見え、愛しくすら感じてしまうから不思議です。  抱腹絶倒あり、ドキドキハラハラあり、うるっとくるような感動あり。特にラストの畳みかけるようなどんでん返しは圧巻。早見さんの力量がじゅうぶんに発揮された極上のエンターテインメント小説として、本屋大賞にノミネートされるのも納得の一冊です。
"ググる"前にすべきことがある!? 面白いアイデアを生み出す「妄想術」
"ググる"前にすべきことがある!? 面白いアイデアを生み出す「妄想術」 ネットで調べれば大抵のことが簡単に分かる現代。"ググる"という言葉も定着してきました。そんな時代に"ググらない"というタイトルの本が出れば「では、何をするの?」と疑問に思うのではないでしょうか。本書『面白い!を生み出す妄想術 だから僕は、ググらない。』の著者・浅生鴨さんが大切にしているのは、妄想することです。本書は発想法の手引き書かと思いきや、「もっと妄想しましょう」「一緒にこんな妄想をしてみるのはどうですか?」といったことが書かれています。  厳密には、浅生さんはグーグル検索などのネット検索を使用しないわけでありません。ただ、最初の手段ではないと言います。ネット検索よりも妄想に多くの時間を費やしているのです。  妄想の仕方はいくつかあり、浅生さんが実践している方法を、例を挙げながら丁寧に解説しています。擬人化させたものがどんな会話をするか妄想したり、「だから」「しかし」「そこで」などの接続詞を順番に使って延々と物語を紡いだり、ひとつのキーワードをもとにダジャレや言葉遊びをしながら発展させたり。バラエティ豊かで、ページをめくる手を止めて実践したくなるものばかりです。もしかしたら、それが浅生さんの狙いかもしれません。  本書では、"どれほどいいことを考えていても、その考えが頭の中にあるだけで、まだ外に出てきていない状態では、アイデアとは呼べないんじゃないか"と、妄想した内容を外に出す重要性が何度も説かれています。しかし、実践してみると分かるのですが、浅生さんのように次から次へと妄想していくのは意外と難しく、さらにそれをアウトプットしようとすれば、まったく思い通りにいきません。なんとも奥深い妄想の世界。  また、浅生さんは、妄想には十分な知識が必要であるとも指摘します。重要なキーワードを見つけたら、それについて徹底的に調べるのです。名前の由来や同義語、場合によっては専門家に話を聞くといったことまですると言います。そうすることで、妄想できる範囲が広がり、妄想がはかどるというわけです。  浅生さんは本書で何度も「僕にもわからない」という表現を使っています。妄想の展開は妄想している本人でさえ、どこへいくのかわからない意外性があるようです。  面白いアイデアが浮かばずに困っている方は、浅生さん流の妄想術を日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。妄想が積み重なることで、ネット検索では出会えないような予想外のアイデアが浮かんでくるかもしれません。
【「本屋大賞2020」候補作紹介】『線は、僕を描く』――水墨画との出会いで人生が変わった青年の成長物語
【「本屋大賞2020」候補作紹介】『線は、僕を描く』――水墨画との出会いで人生が変わった青年の成長物語 BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2020」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは砥上裕將(とがみ・ひろまさ)著『線は、僕を描く』です。 ******  本書は講談社の「第59回 メフィスト賞」受賞作。両親を交通事故で亡くし、自らも生きる意味を失った大学生が、水墨画との出会いを通して自分を取り戻す成長の物語です。  大学生の青山霜助(そうすけ)は、展示場のパネル運びのバイト後に、会場で"ある老人"と出会います。チャーミングなあごひげと柔和な表情から「びっくりするくらい親しみやすい」その老人に控室へ通され、なぜか弁当をごちそうされ、箸の持ち方まで褒められるのでした。  老人は会場内を案内し、次々と霜助に水墨画の感想を求めます。中でも霜助が驚いたのは「真っ黒なはずなのに花が真っ赤に見える」バラの絵でした。霜助が熱心にそのバラについて評すると、老人は不意に「弟子入り」を持ちかけます。実は老人の正体は、水墨画家で大物芸術家の篠田湖山(しのだ・こざん)というから驚きです。こうして絵筆を握ったことがない"ド素人"大学生が、水墨画の世界へ飛び込むことになります。  本書では湖山先生から水墨画の解説やその神髄が語られるのも魅力の一つです。例えば、霜助が初めて墨をするシーン。思案しながらまじめにすった墨と、何も考えず力を抜いた墨では、絵の"きらめき"が違ったというエピソードが展開されます。湖山先生は言います。 「粒子だよ。墨の粒子が違うんだ。君の心や気分が墨に反映されているんだ。(中略)自分独りで何かを心を閉ざしている。その強張りや硬さが、所作に現れている」(本書より)  湖山先生は霜助のまじめさについても「悪くないけれど、少なくとも自然じゃない」と指摘。水墨とは神羅万象(しんらばんしょう)を描き出そうとする試みであり、絵師が「自然というものを理解しなくて、どうやって絵を描けるだろう?」と投げかけます。これを機に霜助は戸惑いながらも、水墨画に魅了されていきます。  脇を固める個性的なキャラクターも見逃せません。湖山門下の代表的な絵師で、ガテン系のお兄さんのような少し軽い雰囲気を漂わす西濱湖峰(こほう)、同じく湖山賞を最年少受賞した芥川龍之介似の美男子の斉藤湖栖(こせい)。さらに、自称"親友"を名乗る大学の同級生の古前(こまえ)、同じゼミのしっかり者女子の川岸との交流もユニーク。  特筆すべきは、この物語のカギを握る存在で、近寄りがたい黒髪美女の千瑛(ちあき)。湖山先生の孫である彼女は、霜助の弟子入りが気に入らず、湖山賞の受賞をかけて勝負を仕かけてきます。ライバル同士(?)切磋琢磨していく2人の姿と距離感の変化に注目です。  水墨画が文章から目に浮かぶような表現、そして閉ざされた霜助の心が、線を描くごとに少しずつ開かれる描写は、著者が現役の水墨画家ならではの魅力。多くの読者を物語に惹きつけることでしょう。読後は改めてタイトル『線は、僕を描く』が心に響くはずです。
恫喝や不倫!? 文豪たちの"どうかしてる"私生活、現代に通じるものがある...
恫喝や不倫!? 文豪たちの"どうかしてる"私生活、現代に通じるものがある... 芥川龍之介や夏目漱石など、"文豪"と呼ばれる人物の名前や作品を知る人は多いでしょう。最近では、太宰治『走れメロス』の一節「メロスは激怒した」を使った大喜利をSNSで楽しむ人がいたり、文豪をアニメキャラクターにした作品が人気になったりと、身近に感じている人もいるかもしれません。しかし、彼らの私生活や交友関係を知る人は少ないのではないでしょうか。進士素丸さんの著書『文豪どうかしてる逸話集』には、そんな文豪たちの知られざる素顔がまとめられています。  本書は、第一章「太宰治を取り巻くどうかしている文豪たち」、第二章「夏目漱石一門と猫好きな文豪たち」、第三章「紅露時代の几帳面で怒りっぽい文豪たち」、第四章「谷崎潤一郎をめぐる複雑な恋愛をした文豪たち」、第五章「菊池寛を取り巻くちょっとおかしな文豪たち」の五つの交友関係から構成されており、各章で一人ひとりの人物について丁寧に説明しています。味のあるイラストで描かれた相関図やプロフィール、進士さんのくだけた言い回しの解説文が非常に分かりやすいです。  たとえば、お酒に酔うと太宰治によく絡んでいた中原中也は、おろおろする太宰に"「青鯖(あおさば)が空に浮かんだような顔しやがって」と、よくわからない詩人ならではのセンスで罵倒"したそうです。また、泉鏡花は極度の潔癖症で、"豆腐の「腐」の字を見るのも書くのもいやで、「豆府」と書いていた"など、文豪ならではの逸話にクスッとさせられます。  ほかにも、太宰は芥川龍之介を好きすぎるあまり、芥川賞を受賞したくて選考委員・川端康成に"「小鳥と歌い、舞踏を踊るのがそんなに高尚か。刺す」"と恫喝したり、内田百閒は借金することを「錬金術」と呼んだり、谷崎潤一郎は妻の妹に恋したから友人に妻を譲ることに決めたり(のちにすぐ不倫)、読めば読むほど文豪の"どうかしてる"私生活に興味が湧いてきます。  また、こうしたエピソードだけではなく、太宰と中原、漱石と正岡子規の友情にホロリとさせられたり、"結核を患い何度も喀血(かっけつ)していた子規は「血を吐いても鳴き続ける」と言われるホトトギスに自分を重ね、「子規(ホトトギスの漢字表記)の俳号を使い始めます"という、披露したくなるようなマメ知識があったりと、さまざまな逸話が詰まっています。  現代にも通じる問題や恋愛の悩みを抱える文豪の姿を想像すると「素晴らしい功績を残した彼らも私たちと同じなんだな」と親近感を覚えます。本書で彼らの人間味あふれる一面を知れば、作品をより一層楽しめるかもしれません。
バンクシーとは何者なのか? 正体不明のアーティストの全体像に迫る入門書
バンクシーとは何者なのか? 正体不明のアーティストの全体像に迫る入門書 世界各地でゲリラ的に出没し、話題をかっさらう正体不明のストリート・アーティスト、バンクシー。名前はテレビやネットで目にするものの、その存在については詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。  また、バンクシーについて多少は知っているという人も、「なぜ正体を明かさないのか?」「誰がバンクシーを支援しているのか?」「一流の芸術家なのか、それとも壮大な詐欺師なのか?」といった疑問には、なかなか明確に答えられないのではないでしょうか。  こうした謎に迫ったバンクシーにまつわるガイドブックの決定版ともいえるのが、『バンクシー アート・テロリスト』です。本書は「はじめに」で、東京の日の出駅付近で見つかったバンクシーの作品かもしれない絵、そして日本メディアでも大きく報道された「シュレッダー事件」を取り上げ、日本とバンクシーとの関わりを紹介しつつ読者の興味を誘います。  そうして、第一章「正体不明の匿名アーティスト」、第二章「故郷ブリストルの反骨精神」、第三章「世界的ストリート・アーティストへの道」、第四章「メディア戦略家」、第五章「バンクシーの源流を辿る」、第六章「チーム・バンクシー」、第七章「表現の自由、民主主義、ストリート・アートの未来」といった章立てで、バンクシーの全体像にさまざまな角度から迫っています。  たとえば、先にも挙げた「バンクシーはなぜ正体不明のまま活動するのか?」という問題。これは第一章に詳しく書かれていますが、一つの端的な答えとしては「グラフィティという行為が多くの国に置いて『犯罪』、あるいは『非合法』と考えられているから」。グラフィティとは壁などに描かれた落書きのことで、あらかじめ許可を与えられた場所や依頼された場所に作品を描く合法的な作家もいますが、バンクシーは「イリーガル(非合法)」の作家。もし身元が特定されてしまったら、過去の仕事のために逮捕されたり、今後の活動が制限されたりする可能性があるというわけです。  とはいえ、正体不明のままに世界を股にかけてこれだけ大規模な活動をするというのはどう考えても難しい。となると、そもそもバンクシーとは一人なのか、彼の活動の支援や広報はどういった人たちがおこなっているのか、といった疑問も出てきて、なおさら「バンクシーの正体とは?」という答えを知りたくなるはずです。そうした謎について本書では、今の時点で世の中に出ている情報から、最大限にわかりやすく、詳しい情報を読者に与えてくれていることと思います。  2020年3月15日から9月27日まで横浜アソビルで「バンクシー展 天才か反逆者か」の開催も予定されており、日本では今後もまだまだ新たなファンを増やしていくであろうバンクシー。ぜひ本書を読んでその全体像に迫り、皆さんなりの解釈を見つけてみてください。

この人と一緒に考える

業界歴20年の葬祭ディレクターが令和時代の新しい葬儀スタイルを提案
業界歴20年の葬祭ディレクターが令和時代の新しい葬儀スタイルを提案 2009年ごろに生まれたと言われる「終活」という言葉。現在、それなりに広まり定着しているように思われますが、実際に自身の死に際について具体的に考えている人はどれほどいるでしょうか?  「自分自身の葬儀のことについて事前に調査している人は少数派」「私の肌感覚では10%もいらっしゃいません」と言うのは、業界歴20年になる葬祭ディレクターの大森嗣隆さん。現在、日本のお葬式の90%以上が仏式でおこなわれているそうですが、その理由は「お葬式ってそういうもんでしょ」と皆が思い込んでいるからだ、と大森さんは指摘します。読者の皆さんも、そう考えている人が多いのではないでしょうか。  けれど、葬儀にかかる費用は平均200万円。この金額は「周りもそうだから」という理由だけで支払うには高すぎるように思います。こうした「これまでの当たり前」に疑問を投げかけ、令和時代の新しい葬儀を提案しているのが、大森さんの著書『無宗教なのにどうしてお葬式にお坊さんを呼ぶの?』です。  結論から先に紹介すると、大森さんが提唱するのは「お坊さんのいないお葬式」。葬儀業界には長らく「仏式のお葬式」という安定したビジネスモデルがあったといいます。いわゆる、お寺を模した祭壇があり、僧侶が使用する備品があり、儀式の様式に則った式次第があり......といった葬儀プランです。しかし、無宗教の人が圧倒的多数だとされる日本において、「葬儀だけ宗教儀式でおこなうことにいったい何の意味があるのだろうか?」と大森さんは問いかけます。  本書には、大森さんが調査会社に依頼しておこなったアンケートが豊富に掲載されており、その中には「お坊さんを呼ばない無宗教形式の葬儀についてどう思いますか?」という質問があります。アンケート対象者は50代から80代で、40%以上が葬儀参列経験者や喪主経験者だそうで、最初におこなった「お葬式をどの形式で行いたいですか?」という質問に、約68%の人が「従来通りの仏式の葬儀を望む」と回答しました。しかしその後、アンケートを通じてお葬式に関するさまざまな知識を知ってもらい、「ご自身の葬儀をあげてもらうなら、お坊さんを呼んでお経をあげてもらうのではなく、お別れ会形式でしてもらいたいですか?」と尋ねたところ、約62%の人が「お別れ会形式が良い」「できればお別れ会形式が良い」と肯定する結果となったそうです。  つまり、これまでの形骸化されたビジネスモデルや私たちの固定概念から「仏式が当然」と思い込んでいる人が多いものの、「実のところ多くの人が仏式の葬儀に本当はこだわっているわけではない」ということが推測できます。こうしたことも含め、「これからの葬儀はもっと自由であって良い」「新しいお葬式の在り方を望んでいって良い」というのが、大森さんの主張というわけです。本書では、無宗教形式、お別れ会形式、想送式なども紹介されていますので、皆さんもご覧になって新しいスタイルの葬儀について知ってみてください。  身内が亡くなってから葬儀がおこなわれるまでは数日間しかありません。愛する者が亡くなってショックを受けている中、どのような葬儀をおこなうか事細かに伝えられる遺族は少ないでしょう。残される家族のためにも、そしてこの世を去る自身のためにも、「どういったお葬式をしたいか」を事前に考えておくことの大切さについて、本書を読むと改めて感じさせられます。
著者は元SDN48! 崖っぷちアラサー女子がおじさんとの同居から人生を見つめ直す実録私小説
著者は元SDN48! 崖っぷちアラサー女子がおじさんとの同居から人生を見つめ直す実録私小説 こちらをドキッとさせるような、センセーショナルなタイトルがつけられた本書『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』。なんともなまめかしい想像をしてしまいそうですが、そのつもりで読むと裏切られることになるかもしれません。タイトルにある「元アイドル」と「赤の他人のおっさん」との間に性的な関係は一切ナシ。本書は、人生に行き詰った崖っぷちアラサー女子が50代男性との同居を通して、自分を見つめ直し、人生を再生させていくという物語なのです。  28歳の春、職なし×彼氏なし×貯金もほとんどなしという"人生が詰んだ"状態になった元アイドルの主人公。心配した姉からルームシェアを薦められ、一般企業に勤める56歳のサラリーマン男性「ササポン」を紹介されます。こうして、ササポンが住む一軒家に引っ越した主人公は、恋人でも家族でもない"おっさん"とひとつ屋根の下で一緒に暮らすことに......。    ササポンは"自然体"という表現がぴったりな人物。会社から帰宅するとステテコに着替え、ソファでテレビを観るのが日常で、ときには主人公と一緒にドラマやニュースを観ることもあります。風呂は共同、互いの食生活や掃除、洗濯には口を出さず、冷蔵庫は自然と上下でスペースを分けて使うように......。主人公とは世代も性別も違うのに、なんとも気兼ねのいらない気楽な存在ではないでしょうか。はたから見れば奇妙な関係性ですが、主人公にとってこの同居生活は安定剤のような役目を果たし、次第に「この特殊な生活の中で自分が変われるかもしれない」という期待まで抱くようになっていきます。  実はこの小説、著者・大木亜希子さんの実録私小説である点も話題を呼んでいるところ。大木さんはアイドルグループ・SDN48に所属していた過去を持つ正真正銘の元アイドルです。だからこそ、若さや美しさに価値を置いていた彼女が30歳を前に焦りを感じ、仕事にやっきになったり、結婚相手候補の男性たちとの「ノルマ飯」に精を出したり、その結果、ある日突然、駅のホームで足が動かなくなるほど精神を病んでしまう姿はとてもリアル。そんな彼女にとって、何かを要求することなく常に自分のそばにいてくれるササポンが必要不可欠な存在になるのは自然なことであり、本書を読んだ女性たちがSNS上で「ササポン量産化希望」との声をあげるのも、けっして不思議なことではないことと思います。  ササポンだけでなく、失恋に苦しむ主人公のライフサポートをしてくれる友人たち、親身になって励ます家族、カウンセリングを担当している精神科医の大熊など、主人公に寄り添ってくれる人たちとのやりとりにも、心がじんわりとあたたまる本書。私たちの生活にササポンのような存在が都合よく現れることはそうそうありませんが、恋愛や仕事、人生に行き詰まったときにどうやって立ち直っていけばよいか、そのヒントがいくつも詰まっている一冊といえそうです。
山口県で起きた連続殺人放火事件。限界集落の闇にルポライターが単身で挑む!
山口県で起きた連続殺人放火事件。限界集落の闇にルポライターが単身で挑む! 2013年の夏に起きた「山口連続殺人放火事件」を皆さんは覚えているでしょうか? 山口県周南市のわずか12人が暮らす限界集落で、住民の一人のある男性が一夜にして5人を殺害し、被害者宅2軒に放火したという事件です。  それから3年が経ち、世間の人々の記憶から事件のことが消えかかっていたころ、ある雑誌から「この地区で戦中に夜這いの風習があったかどうか確かめてきてほしい」という依頼を受けたフリーライターの高橋ユキさん。この記事自体は最終的にはお蔵入りとなってしまうのですが、自分の足で村を歩き住民たちに取材をする中で、彼女はある不穏な噂を耳にすることとなります。  先述の連続殺人放火事件が起きた際、逮捕された保見光成の自宅のガラス窓に貼ってあった「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という川柳は大きな注目を集めました。マスメディアではこれを「放火をほのめかす貼り紙」として決意表明や犯行予告的な意味合いで取り上げていましたが、事実とは異なることを高橋さんは最初の取材時に知るのです。それは、この事件以前にも村では放火が幾度かあり、保見はそのことを川柳にしたのではないかということ。そして、以前の放火犯は保見ではないと村人たちは口をそろえて言うのです。  なんとも不気味で不可解な話に、高橋さんはこの村の正体を知るべく、独自でさらなる取材を続けることを決めます。  陸の孤島ともいうべき閉ざされた村、住民たちによるうわさ話、血なまぐさい事件の数々......まるでミステリー小説の筋書きを見ているようですが、これはフィクションではなくリアルなできごとだというのが一層、読み手の背中をゾクリとさせます。怖いのに、続きが気になってページをめくる手が止められない......!  事件の詳細を知らない人の中には、「妄想性障害を患っていた保見が、住民たちからうわさ話や嫌がらせをされていると勝手に思い込み、それがエスカレートして犯行に及んだ」と思っている人も多いかもしれません。しかし、それは保見の思い込みではなく、住民たちの間では名指しで口にしあうようなうわさ話が存在していたことは事実であり、あるシステムによってうわさ話は何倍にも増幅されて広まっていたことが本書には記されています。  保見は2019年7月に死刑判決が確定。しかも拘置所にいる間もどんどんと妄想性障害の症状を悪化させていたというだけに、もはや彼自身の口から事件の真相や村の正体について聞けることは永遠にないでしょう。だからこそ、皆さんには本書を読んで、サブタイトルにもなっている「うわさが5人を殺したのか?」という意味を考えていただきたいところです。きっと、これまでの報道などとはまた別の側面から、この事件の一端が見えてくることと思います。
クズ男、マゾ、ぼっち、不倫......ダメダメな歌ばかりを集めた「逆ベスト版・万葉集」
クズ男、マゾ、ぼっち、不倫......ダメダメな歌ばかりを集めた「逆ベスト版・万葉集」 いわゆる"残念な人"というのは皆さんの周りにも少なからずいるのではないでしょうか。恋愛で周りが完全に見えなくなっている人、思い込みがはなはだしい身勝手な人、イケメンなだけのクズ男、ちょっと面倒なメンヘラ女子......などなど。それ、令和の現代だけじゃないみたい!  万葉集というと優雅で美しい歌を集めた和歌集だという印象を持っている人もいるかと思いますが、そんなイメージを木っ端みじんにぶった斬ってくれるのが『ざんねんな万葉集』。万葉集には全4516首が収められていますが、その中にはざんねんな歌、微妙な歌、イタい歌というのもかなりの数、詠まれているのだとか。そうした歌たちにスポットライトを当てるべく、古文講師の岡本梨奈さんが執筆したのが本書なんです。  たとえば最初に登場するのはとんでもないサイテー男。「愛しと 我が思ふ妹は はやも死なぬか 生けりとも 我に寄るべしと 人の言はなくに」という歌の意味は、「美しいと私が思う愛しいあの娘は早く死なないかなあ。生きているとしても『私になびくだろう』と誰も言ってくれないので」。要するに、「付き合ってくれないなら死ね」......なんという自己チュー! こうしたタイプの人間って奈良時代にもいたのですね......。  しょっぱなからこんな刺激的な歌が紹介されている本書。続いては、女性が1000年以上の時を超えて共感してしまうこんな和歌はいかがでしょう? 「西の市に ただひとり出でて 目並べず 買ひてし絹の 商じこりかも」――この歌は「西の市にただ一人で出かけて見比べないで。買った絹が誤算だなあ」という意味。市場に出かけて、他の商品と見比べずに一目惚れでお買い上げ。しかし、帰宅して冷静に考えてみたら「なんでこんなの買っちゃったんだろう」となってしまった......これ、今の私たちにもあるあるな体験談ではないでしょうか。実はこの歌は「よく考えずに結婚したけれど、見掛け倒しのざんねんな男だったことを後悔した」という内容の比喩歌だと考えられているそう。見た目だけのイケメンを選ぶとあとあと後悔......これまた「あるある」ですね。  さらに歌の数々をさらに盛り上げてくれるのが、(ほぼ)全員美男美女に描かれたイラスト。BLを中心に活動しているマンガ家・イラストレーターの雪路凹子さんが担当しており、超美麗! ......なんだけど、表紙の男性は顔を足で踏まれて鼻血を出している(帯を取ると小指を立てている!)などとても面白いものになっています。  華やかで高尚に見える万葉集の世界にも、ちょっと違うほうに目を向ければこんな残念な人たちがいる......。人間の昔から変わらぬダメさは、見ていると憎めず、逆になんだかほっとしてしまうところも。逆ベスト版・万葉集ともいえる本書、ぜひ皆さんも「ふふっ」と笑いながら肩の力を抜いて読んでみてください。
テック界の「こんまり」と話題の著者による「デジタル片付け」の実践法とは
テック界の「こんまり」と話題の著者による「デジタル片付け」の実践法とは 他にやらなくてはいけないこと、やるべきことはいろいろあるのに、ついつい陥ってしまうスマートフォンの罠。InstagramやTwitterなどのSNSにソーシャルゲームやアプリ、終わりなきネットサーフィン......こうした誘惑を断ち切れないという人も多いのではないでしょうか?  一定期間スマホやパソコンなどのデジタル機器の使用を控える「デジタルデトックス」という言葉がありますが、もはやそうした一時しのぎでは不十分なのかもしれません。そこで、本書の著者カル・ニューポート氏が新しく掲げたのが「デジタル・ミニマリズム」という言葉です。  これは思想であり、哲学でもあります。デジタル・ミニマリズムについて著者は本書で、「自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、ほかのものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学」と定義しています。  デジタル・ミニマリズムにおいて大事なのは、一般的なツールをすべて排除するのではなく、"これを成し遂げるためにテクノロジーを利用するのは最善といえるだろうか"と自身に問いかけ、数々のサービスを慎重に取捨選択していくということ。そしてデジタル・ミニマリストになるためには、今までの習慣をちまちま変えていく方法よりも、短期間で一気に移行するほうが成果が長続きしやすいそうで、この短期決戦のプロセスを本書では「デジタル片付け」と呼んでいます。  では、デジタル片付けは具体的にどのようにおこなうのでしょうか? まずは30日というリセット期間を定め、かならずしも必要ではないテクノロジーの利用を休止する。そしてこの期間に楽しくてやりがいのある活動や行動を新しく探したり再発見したりする。休止期間が終わったら休止していたテクノロジーを再導入し、その一つひとつについて利用すべきか検討する、というプロセスをおこなうのだそう。  本書には、デジタル片付けをおこなう上での演習も示されています。たとえば「スマートフォンを置いて外に出よう」「"いいね"をしない」「週に何か一つ、修理するか作るかしてみよう」「スマホからソーシャルメディアを削除しよう」「フィーチャーフォンに戻そう」など。簡単なものからハードルの高いものまでありますが、ここまでしないとスマホ依存はもはや容易には防げないのかもしれません。  ちょうど年も変わり、新しい試みを考えている人も多い時期。デジタル・ミニマリズムの考えに共感した方は、本書を読んで実践してみるのもよいかもしれません。魅力的なデバイスだらけの世の中だからこそ、自身で取捨選択して人生の質を高めていくことの必要性が実感できるのではないでしょうか。
ナイツ・塙が漫才を徹底分析!M-1の必勝法とは?なぜあのコンビは面白い?
ナイツ・塙が漫才を徹底分析!M-1の必勝法とは?なぜあのコンビは面白い? 2019年もおおいに盛り上がりを見せた『M-1グランプリ』。ほぼ無名であったミルクボーイが王者となりましたが、この結果を導き出したのが総勢7名から成る審査員です。  2018年に続き、その中のひとりを務めたのが、お笑いコンビ「ナイツ」の塙 宣之さん。ナイツ自体も過去に何度かM-1には出場していますが、実はその舞台では一度も「ウケた」という感触を得たことがないといいます。そんな塙さんが「青春時代、恋焦がれたM-1に振られた男が腹いせで本を書いている」というような気持ちで取り組んだのが本書。ここにはM-1に対する並々ならぬ熱い思いが詰まっており、トークバラエティ番組『アメトーーク!』などでも垣間見える塙さんの分析力や観察眼とも相まって、珠玉の一冊に仕上がっています。  全部で90の漫才に関する質問と、それに対する塙さんの回答から成り立っている本書。「M-1は『しゃべくり漫才』が強いという印象があります」「塙さんの中の審査基準を教えてください」といったM-1に関するものから、「漫才で人間味を出すという言い方をしますが、どう出せばいいのですか?」「下ネタもそうですが毒も扱いが難しいですよね」など漫才の技術的な部分に関するもの、「爆笑問題がM-1に出ていたら......」「ジャルジャル『ぴんぽんぱん』はどう評価しましたか?」といった他の芸人に関するもの、そして「ヤホー漫才誕生前夜。聞いているだけで、ワクワクします」といったナイツの漫才に関するものまで。お笑い好きな人であれば、これらの質問を見ているだけでも興味をそそられ、塙さんの回答を知りたくなるのではないでしょうか?  そして、塙さんの分析がまた論理的で的確。たとえば、2018年のM-1の舞台で自分の容姿を卑下する漫才をおこなった「ギャロップ」を審査員の上沼恵美子さんがこき下ろしましたが、同じく自虐ネタを披露した「ミキ」は絶賛したことから、当時「えこひいきではないか」と一部で議論を呼んだことがありました。本書で塙さんは「上沼さんは、(ギャロップの)発想が安易だと言いたかったのだと思います」とし、「15年ぐらいのキャリアを積んだ芸人が陥りがちな罠」と指摘。知名度もそこそこありファンもいるので、ふだんはそのアドバンテージで笑ってもらえるが、M-1の舞台はそれでは通用しないというのです。いっぽうの「ミキ」については、たしかにネタはベタではあるとしながらも、彼らのほれぼれするような天然のしゃべくり漫才は、ネタどうこうがむなしくなってくるほどモンスター級に「突き抜けている」と評します。そしてもうひと組、2015年のM-1王者「トレンディエンジェル」もハゲネタをウリにしているコンビ。ですが、彼らの人間性やスキルのおかげでハゲネタが不思議と自虐になっていないと分析。同じ「ハゲ」や「モテない」ネタでもどこに評価の違いが出てくるのか、わかりやすく論じられていることと思います。  現役のプロ漫才師による、明快で論理的な漫才読本。ありそうでなかなか類のない稀有な一冊として、本書は今後もお笑い好きや漫才師志望の人たちの間では読み継がれていくことになるかもしれません。

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    ドラマ化も!群馬県高崎市の「絶滅の危機にある絶品メシ」を集めた書籍第2弾
    ドラマ化も!群馬県高崎市の「絶滅の危機にある絶品メシ」を集めた書籍第2弾 以前、BOOKSTANDでもご紹介した『絶やすな! 絶品町グルメ 高崎絶メシリスト』。その続編となる第2弾が発売されました! タイトルには「特盛版」という言葉が追加され、第1弾をしのぐほどの濃ゆ~い"絶メシ"がズラリと並んでおります。  ここでちょっとおさらいすると、"絶メシ"とは「絶滅してしまうかもしれない、町の絶品メシ」のこと。「出すメニューは安くて美味い」「地元民に愛され続ける名物店主がいる」「お店は歴史を刻んできたことがわかる古びたたたずまい」といった特徴を備えており、その聖地と知られているのが群馬県高崎市。そんな高崎の選りすぐりの絶メシ51店舗を紹介しているのが本書になります。  ページをめくると目に入るのは、ラーメンやレバニラ、餃子といった大衆料理。そして年季が入った壁やテーブルに、カタブツそうな店主、そこに集う地元の人々。インスタ映え全盛の現代に、もしかしたらキラキラ感は一切ナシかもしれません。けれど、その渋くて、実直で、それでいてゆるやかさただよう空気感が、本書の、そして絶メシの大きな魅力であることは間違いありません。  たとえば、「絶メシリストNO.1」として最初に登場する「大将」。こちらは見るからに「大将」然とした店主が腕をふるう店。ニラともやし、レバーがたっぷり入った「レバニラ」は600円、常連客の定番だという餃子は300円という安さ。白い半袖シャツに首からタオルを引っかけた店主・秋山さんは「全然儲からないんだよなぁ。儲かりたくて作ってるわけじゃないからいいんだけどさ」なんて言いますが、このぶっきらぼうにぼやく感じがまたたまりません。もう大衆食堂の王道ド真ん中ともいうべきこちらのお店なら、至高の絶メシ体験ができるはず!  ほかにも、創業半世紀、75歳を超えた店主が今も一枚一枚手作業で包む餃子が名物の「大洋軒」、タレと店主のおばちゃんのトークが超絶に濃厚な焼きまんじゅうのお店「オリタ」、昭和の風情を残すたたずまいやメニューで喫茶店マニアをもうならせる純喫茶「コンパル」、近所の高崎経済大学生が通いつめるというボリューム抜群の学生食堂「からさき食堂」など、個性豊かなお店が勢ぞろいしています。  なお、「絶メシリスト」は2020年1月24日より、『絶メシロード』というタイトルで連続ドラマとして放送予定(テレビ東京系列)。映画『カメラを止めるな』で一躍有名になった濱津隆之さんを主演に、平日にくたびれたサラリーマンが絶メシを求めて車中泊で日本全国を巡るグルメドラマになるとのこと。書籍を超えてさらなる高まりを見せる「絶メシ」に今後も目が離せません!
    著者は高校教師にしてYouTuber!日本史を一つの物語として読み解く新感覚の教科書
    著者は高校教師にしてYouTuber!日本史を一つの物語として読み解く新感覚の教科書 世の中に参考書の類は数多くありますが、本書『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』の特筆すべき点は、著者の山崎圭一氏が現役の公立高校の教師であるということ。さらに山崎氏は、日本史や世界史の社会科目の授業動画をYouTubeに公開しているYouTuberでもあるんです! 現在、登録者数6万人強を誇る動画チャンネル「Historia Mundi」の動画は、大学受験生や社会人、教育関係者などから「神授業」として好評を得ているといいます。  そんな山崎氏が執筆したシリーズ第1弾『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』は19万部を突破。満を持して出版した第2弾が、日本史バージョンとなる本書です。  巷には日本史を題材にした書籍やドラマ、映画、ゲームがあふれています。にもかかわらず、「日本史の授業が苦手だった」「戦国時代や幕末など特定の時代は好きだけど、日本史全般には詳しくない」という皆さんも少なくないはず。これはなぜなのでしょうか? 山崎さんは、高校の日本史の教科書は「じつは時代区分ごとに『政治』『社会』『経済』『文化』のコーナーに分かれ、"行きつ戻りつ"記述されて」おり、わかりにくい構造があると指摘します。この問題点を解消すべく、本書は 1、一般的な教科書とは違い、すべてを数珠つなぎにして「1つのストーリー」にしている 2、ストーリーの主役は「政権担当者(天皇・将軍・内閣総理大臣など)」 3、年号や年代を使わない という3点に基づき書かれているのが大きな特徴です。  日本史の教科書に年号が出てこないだなんて画期的! 「そんなのアリ!?」と驚く方もいるかもしれません。山崎氏が言いたいのは年号を覚えるのが無意味だということではなく、あくまでも「まずは全体の流れ、ストーリーを頭に入れる」のが大切だということ。本書は「第1章 縄文時代・弥生時代・古墳時代」「第2章 飛鳥時代・奈良時代」と章ごとに時代で分けられているのですが、まるでひとつの壮大な物語を読んでいるかのように、一冊を通して歴史の流れがスラスラと頭に入ってくることに驚かされます。  たとえば、日本史の中でも特に苦手な人も多いであろう近代史の章を見てみましょう。江戸幕府解体後の日本について、本書は「新政府は二手に分かれ、一方は欧米の視察と条約改正交渉、一方は諸制度の整備、というように分担した」と記述。欧米視察組は政府のエース級をそろえた「岩倉使節団」、留守政府のほうはどちらかといえば「居残り組」の性質があったと説明します。とてもわかりやすい表現ですし、このあと二派による分裂が起きるのも自然の流れに感じられますよね。このように、歴史の内容自体に興味をかき立てられるような書き方がされているのも本書の優れた点ではないでしょうか。また図解も豊富で、難しい制度や複雑な人間関係も理解しやすい仕組みになっています。  現在受験生の皆さんは、サブ的な教材として一読してみてはいかがでしょうか。すでに社会に出ている人にとっても、自分の国の歴史を知っていて損なことはなし。教科書として堅苦しく考えず、一冊の歴史小説を読むような気軽な気持ちで手にとってみることをおすすめします。
    読めば絶対行きたくなる!ファミレスやファストフードのカラクリや楽しみ方って?
    読めば絶対行きたくなる!ファミレスやファストフードのカラクリや楽しみ方って? ファミレスにファストフード、牛丼屋に立ち食いそば......日本には数多くの飲食チェーンがありますが、皆さんの中にはチェーン店というものに対してネガティブなイメージを抱いている人も少なくないかもしれません。 「チェーン店なんておいしくない」 「安くて便利でどこにでもあるから仕方なく使うだけ」 「世間の勝ち組はこんなところには来ないだろう」 などなど......。けれど、その思い込みがどれほどもったいないかは、本書を読めばわかることと思います。『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』は、かれこれ20年以上も飲食業界に身を置き、数々の飲食店を立ち上げてきたという稲田俊輔さんが、日本の飲食チェーンの裏側や徹底的に楽しむ方法について明かす一冊。著者によると、「飲食チェーンは宝の山」だというのです。  本書にはガスト、デニーズ、バーミヤン、マクドナルド、吉野家、餃子の王将などさまざまな飲食チェーンが登場しますが、中でもいちばんページが割かれているのが「サイゼリヤ」。そもそも本書は、著者がブログに投稿したサイゼリヤに関する記事が反響を呼んだことがきっかけで出版されたといいます。飲食のプロの心をも動かす秘密がサイゼリヤにはあり、世の中の多くの人たちもまたサイゼリヤに大きな関心を持っているといえるかもしれません。  サイゼリヤの魅力をひとことでいうと、筆者は「おいしすぎないおいしさ」だといいます。たとえばサイゼリヤのグランドメニューのパスタのページには、次のようなことが書かれてあるそう。 「具やソースが主張しすぎないシンプルな味付け。ちょうどいいボリューム感。他の料理と組合せたり、みんなで取り分けたり。気分でお選びいただけます」。  つまり、ひと口食べて「おいしい!」となるようなインパクトはお店側も目指していないことが明確に宣言されているわけです。  しかし一方で、無料で用意されているオリーブオイルと粉チーズを見てみると......。オリーブオイルについてはイタリア・ナポリの老舗メーカーと提携して徹底した品質管理の下に直輸入されており、クオリティは確か。そして粉チーズのグランモラビアは熟成感のある硬質チーズならではの深い旨味とフレッシュな風味があり、よくある工業生産的なチーズとはまったく別物なのだそう。これらをかけ放題というのは、間違いなく私たちの自由度や満足感を底上げしてくれます。  さらに、チェーン店であるのに本場思考という挑戦に挑んでいるのもサイゼリヤの特徴だとか。プロシュートやサラミ、サルシッチャといったイタリアの本場の味を高品質低価格で提供したり、濃厚なバッファローモッツァレラや日本では先鋭的な店に使われることが多いペコリーノチーズなどの貴重な品をさらりと取り入れたり。「本格志向の硬派な一面と圧倒的な親しみやすさが混然一体となり、ワン・アンド・オンリーな魅力を紡ぎ出している」というのが筆者のサイゼリヤ評です。  このように、普通であればなかなか知りえない飲食チェーンの本当のスゴさに気づかせてくれる本書。ほかにもカレーマニアがデニーズで注文するべきメニューや、マクドナルドで狙うべき時間帯、吉野家の牛丼を最もおいしく味わう方法など気になる話題が満載です。そして読むとお店に行きたくなること請け合い。皆さんの飲食チェーンを見る目がこれまでとはガラリと変わるかもしれない、そんな一冊といえるでしょう。
    ビジネスパーソンにサウナがおすすめの理由は? サウナ歴20年以上の著者が解説
    ビジネスパーソンにサウナがおすすめの理由は? サウナ歴20年以上の著者が解説 テレビドラマ『サ動』が放送されたり、サウナとコラボしたイベントが開催されたりなど、ここ数年、空前のサウナブームが起きています。その魅力がどこにあるのかを紐解くとともに、ビジネスパーソンに効果的なサウナの活用法を教えてくれるのが本書『人生を変えるサウナ術』です。 本書の帯にはYahoo!株式会社代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏による「仕事で実績だしたければ、サウナに入れ!」との言葉が添えられていますが、ビジネスとサウナ、いったいどのような関係性があるのでしょうか?  そもそも、サウナの最大の魅力とは「ととのう」こと。「ととのう」とはひと言で言うと、「心と身体がリフレッシュされた、調和のとれた理想的な状態」(本書より)です。私たちの日常生活では仕事や人間関係でストレスが溜まっても、なかなか「ととのう」環境が手に入らないことも多いもの。こうした現代社会の中でサウナは、「ビジネスパーソンの心の拠り所、ストレスの多い世の中から精神と肉体を一時避難させ立て直すための、瞑想空間となる力を持っている」と本書には書かれています。  では、「ビジネスに効く、サウナの効用」としてはどのようなものがあるかですが、まずは肉体面での効用(フィジカル的効用)、精神面での効用(メンタル的効用)が挙げられています。ただこれは、皆さんもすぐに思いつくところではないでしょうか。面白いのは「ソーシャル的効用」として「心と身体の距離がゼロになる」「サードプレイスとしてのサウナ」「サウナでつながるコミュニティの輪」が挙げられているところ。たしかに「裸で入る密室の空間」という特徴を持つサウナでは、親密なコミュニケーションが生まれやすく、そこから互いに親しくなったりビジネスへと発展したりといったこともありうるのかもしれません。  ちなみに著者の本田直之さんと松尾大さんは、かれこれ20年近くにおよぶサウナ歴の持ち主。年間200ほどのサウナに入るという本田さんは、現在は数々のサウナイベントをプロデュースしており、年間400ほどのサウナに入るという松尾さんは"ととのえ親方"との愛称で呼ばれ、サウナ室のディレクションを手がけたりしているそう。人生の半分以上をサウナに入りながら、その動向を見守り続けてきたふたりが語るからこそ、本書の説得力が増すというのはおおいにあるかと思います。  このほか、サウナの入り方や海外のサウナ事情、おすすめのサウナスポットなどについてもくわしく触れられており、サウナ入門書としてビジネスパーソン以外も楽しめる本書。気持ち新たに臨みたい一年の始めに読むにはふさわしい一冊といえるかもしれません。
    名画を見る際はどこに注目すればよい? 構図や線、色などから徹底解説!
    名画を見る際はどこに注目すればよい? 構図や線、色などから徹底解説! 「絵は自分の好きなように自由に見ていい」。これはよく言われる言葉ではありますが、「なぜこの絵に惹きつけられるのだろう?」「この絵の良さはどこにあるのだろう?」といった疑問を、感覚だけでなくロジックでも説明できれば、名画をより深く楽しむことができると思いませんか?  そんな"ビジュアル・リテラシー"ともいえる「名画の構造の読み解き方」を教えてくれるのが、本書『絵を見る技術』です。 「絵の見方を知っている」とは「線・形・色などの造形の見るべきポイントを押さえ、その配置や構造を見ていること」だというのは、美術史研究家で本書の著者でもある秋田麻早子さん。では、そもそも絵を見る技術を習っていない素人と、美術教育を受けた人では何が決定的に違うのでしょうか。  著者いわく、それは「目の動かし方」なのだそう。絵の見方を知っている人は、画面を上下左右、端までまんべんなく目を動かし、背景との「関係性」まで意識して見ているのだとか。本書にはそうしたスキルを習得するための秘訣がたくさん出てきます。   たとえば、絵の主役ともいえる「フォーカルポイント」(焦点)の見つけ方。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』という有名な絵がありますが、これはフォーカルポイントを明確に提示している代表格なのだそう。主役となるのはもちろん、中央に座り広い面積を占めているキリスト。後ろが窓になっていて、明暗のコントラストも他より高くなっています。さらに、背景の線がフォーカルポイントに集中している、画面内の他の人物たちが腕や手、視線をキリストに向けていたりすることなどが、さらに拍車をかけています。  このフォーカルポイントの見つけ方を知っていると、まずは絵のどこを見たらいいのかわかるようになり便利ですね。  そして、視線や色、バランスなどに加えてもう一つ重要になってくるのが「構図」です。絵における特定の配置は、慣用句のように決まった意味を持つこともあるため、基本をおさえておくと構図が絵の意味を教えてくれるようになるのだそう。たとえば、配置においてのガイドラインともいえる「マスター・パターン」がわかると、一見何気なく見える絵の中にもすーっと秩序が浮かび上がってくるようになります。  どのように見つけるかというと、まずは絵に十字線と対角線を引いてみる。レオナルド・ダ・ヴィンチの名画『モナ・リザ』を例にとると、左眼が中心線に乗っていて肩が真ん中あたりに来ます。そして、二本の対角線が作り出す三角形の上部に顔、下部に手が収まっていて安定感を感じます。バストアップの肖像画ではこのように目が中心線か対角線の上に置いてあることが多いそうで、「画面の十字線と対角線を、名画は無視できない存在として扱っている」という一つの秩序がわかるというわけです。  これらは本書に登場する「絵を見る技術」のごく一部。ほかにもさまざまな「名画を読み解くカギ」が紹介され、読むだけで絵に対するひととおりの観察眼を養うことができます。あとはより詳しく知りたい部分を自身で調べたり、実際に名画の数々を見て経験を増やしたりすることで、「自分だけの絵の見方」がさらに身についていくことでしょう。本書は、皆さんが名画を見る際のコンパスとなる一冊といえるかもしれません。

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