ジャズと自由は手をとって(地獄に)行く
大谷能生は(ジャズに軸足を置く)音楽家であり、また批評家でもある。本書は、彼が2001年から13年までの間にさまざまな媒体に書いてきた文章を集め、2編の書き下ろしエッセイを加えたものだ。レコードでいえばシングル集のような本で、どこから針を落としても構わないし、どこをトレースしても大谷の文章の芸が滲み出してくる。 黒人音楽に特有な「グルーヴ」の解剖、坂本龍一や村上春樹、クリント・イーストウッドらを「音楽」で探る作家論、アメリカおよび日本のジャズ史、ライナーノーツや書評──お題は多岐にわたるが、どの論考も切り口の鋭さとディテールの緻密さに圧倒される。とりわけ「レコード音楽」=録音物を再生するという音楽的行為が20世紀の音楽批評をいかに駆動させてきたか、との視点には感銘を受けた。 作家の海猫沢めろん氏は、とあるエッセイで「随筆というものの肝は自らの歪んだレンズを通してなにかを伝えることなのである」と書いていた。本書は大谷能生というきわめてユニークなレンズを通して音楽を、世界を見ることができる。
















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